日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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夏型気圧配置の変容と名古屋の異常高温
大和田 道雄*畔柳 洋子石川 由紀中川 由雅梅田 佳子
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p. 106

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抄録
_I_.研究目的東京,大阪に並ぶ三大都市である名古屋は,近年,異常高温に見舞われることが多く,暑さが一段と厳しくなっている。これは,ヒートアイランド強度が1980年当初に比較して2.5倍の5℃に達していることに裏付けられる(大和田,1994)。その要因は,都市化の進展と共に名古屋市,およびその周辺地域の地形的特徴にあると考えられる。名古屋が位置する伊勢湾岸地域は,北太平洋高気圧の西への張り出し方によって暑さが決定されやすい。特に,南高北低型時には,高気圧から吹き出す南西よりの気圧傾度風が鈴鹿山脈を越えて濃尾平野にフェーン現象をもたらし,異常高温を引き起こす。しかし,Climate shift以降は南高北低型の出現日数が増加傾向にあることから,今後暑さによる名古屋の都市環境の悪化が懸念される(大和田,2006)。 そこで本研究は,近年増加する南高北低型の気圧配置時においてヒートアイランド調査を実施し,その分布の実態と要因のメカニズムについて解析を行った。_II_.異常猛暑の資料解析図1は,名古屋,東京,大阪における日最高気温37℃以上の出現日数の経年変化を表したものである。名古屋は,30℃,35℃以上では大阪に次ぐものの,37℃以上では最も出現日数が多いことがわかる。過去46年間で最高の14日を記録した1994年は,全面高気圧型であるが,翌年の1995年は今回と同様の南高北低型であった。これらの気圧場の共通点は,伊勢湾岸地域にフェーン現象がもたらされる典型的な気圧配置であることである。_III_.異常猛暑の実態調査1.観測時の気圧配置観測は,2005年7月22日の最高気温出現時において実施した。この時の気圧場は,北日本に弱い低気圧があって東の海上に前線がみられるが,西日本は大陸から張り出す高気圧と合体して南高北低型の気圧配置になっている(図2)。2.観測方法観測は,定点と移動47地点を含む計48地点において,自動車5台によるアスマン通風乾湿計,野外用自記温度計,データロガーを使用して気温観測,および中浅式風向・風速計による風の移動観測を実施した。3.観測結果気温が最も高かったのは,中心部の熱田区から名古屋市東部の名東区・長久手町付近であった(図3)。これは,西風のフェーンによる影響と市中心部の高温域の移動によるものと考えられる。
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