日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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地球温暖化に伴う局地風(鈴鹿おろし)の変容について
大和田 道雄*鳥居 つかさ
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p. 116

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抄録
I 研究目的 中部日本の太平洋側に位置する濃尾平野では伊吹おろし,伊勢平野では鈴鹿おろしと呼ばれる局地風が卓越する(吉野,1978)。そのため,局地風による大気汚染物質の拡散が期待でき,他の都市に比較して環境容量が大きいと考えられる(大和田,2005)。しかし,濃尾平野で吹く伊吹おろしは,地球温暖化に伴う1970年代後半のClimate Shift以降,減少傾向にある(大和田ら,2001)。これは,中緯度地域の温帯低気圧の移動経路が激しい大気大循環の変動によって,変わってきたからではないかと考えられる。そこで,本研究は伊勢湾岸地域の伊勢平野を対象地域とし(図1),風道にあたる四日市・亀山・津での局地風の変動と地球温暖化との関係を明らかにしようとするものである。II 資料および解析方法 解析に用いた資料は,津地方気象台,四日市および亀山気象観測所における風速および風向のデイリーデータを使用した。  解析期間は,津が1961_から_2004年度,四日市が1966_から_2004年度,および亀山が1979_から_2004年度における12月から3月までとした。おろし日の定義は,西高東低の冬型気圧配置のもとで吹くことを考慮し,大和田ら(2001)に基いて,日平均風速が5.0m/s以上,風向は風ベクトルの範囲を北西から西,すなわち270度から315度とした。III 結 果 津・四日市・亀山の過去約25_から_43年間におけるおろし吹走日数の時系列を移動平均で表した結果,津と四日市では減少傾向を示し,亀山では増加傾向を示した。その中でも,西よりのおろしが増加していることが判明した(図2)。そこで,西よりのおろしが吹く時の気圧配置を分類した結果(Owada,1990),2つ玉低気圧型の出現頻度が増加していることが判明した。この2つ玉低気圧は,南岸低気圧と日本海低気圧によるものと,日本海低気圧と高緯度側の日本海低気圧によるものとがあることが判明した。参考文献吉野正敏(1978):“気候学”.大明堂,331p.大和田道雄(2005):第2章気候.新編安城市史11資料編 自然,抜刷,196p.大和田道雄・櫻井麻理・石川由紀(2001):伊吹おろしの吹走日数からみた気候変動.日本地理学会春季大会予稿集.Owada,M.(1990):A climatorogical study of local winds (oroshi) in central Japan. Doctoral Thes., Inst. Geosci., Univ. Tsukuba, 98pp.
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© 2006 公益社団法人 日本地理学会
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