抄録
長野県上高地には,幅広い谷底が存在し,そこを流れる梓川本流と支流との合流地点には,多くの場所で沖積錐が発達している.この沖積錐は,山地斜面で生産された砂礫が,土石流となって流下・堆積し,生長を続けてきた.そのため,沖積錐の地形的特徴を理解することは,山地斜面から河川への土砂移動過程を解明する上で重要である.そこで,我々は,上高地に分布する沖積錐の一つである奥又白谷の沖積錐について,地形の形態的特徴や植生分布を元に,過去約100年間の地形の変化過程の解明を試みた.本研究では,沖積錐の地形と,植生について面的な現地調査を行い,土石流の流下・堆積の過程とそれに起因する植生のモザイク構造を明らかにした.さらに,流路に建設されている治山ダムが地形,植生環境に及ぼす影響についても言及する.