抄録
1、はじめに Joni Seagerは“The Atlas of Women”の序文で「地図にする一番の長所は、共通性と差異の両方を同時に示せる点だ。地図化は強力な道具である。何が起こっているだけではなく、どこで起こっているかも表し、統計表や解説では決して明らかにできないパターンを、地図では表すことが可能である。女性の生活を地図にしていくことで、世界の女性の同一性と差異はベストなかたちで表せる。この地図が多くの答えを引き出すとともに、それと同じくらい多くの疑問を引き出すことになるのが私の希望である。」と述べている。日本国内においても同一性と差異は存在する。しかし多くの女性は(男性も)そのことを知らない。2、プロジェクトの経緯毎年8月末に国立女性教育会館で全国女性学ジェンダー研究交流フォーラムが開催される。2004年のフォーラムで、Seagerの地図帳を日本語版に翻訳している女性学グループが「地図でみる世界の女性」という分科会を主催していた。その時に会場から「日本でこのような地図はないのか?」という質問が出た。しかし主催者は「知らない。無いと思う」と答えた。発表者らの研究グループは、今まで女性に関するデータマップを作成し出版してきたが、地理学以外の人にはまったく知られていないという事実をその時に突きつけられた。ある参加者から「来年はあなたがここで分科会をやりなさい。」と励まされ、アウトリーチのためのプロジェクトを開始した。3、プロジェクトの目的 データマップを見ることで、自分たちが置かれている状況を絶対視せず、客観的に見つめ直す「まなざし」を持ってもらいたい。またデータマップというツールを使うと、あなたの言いたいことが効果的に表現できるということを参加者に感じ取ってもらいたい。4、ワークショップの内容最初にデータマップの見方を説明する。次に合計特殊出生率・大学短大への進学率・30代の未婚率・労働力人口比率・18歳未満の子どもがいる3世代同居率・生産工程労務職従事者比率・30代の専業主婦率・パートタイム比率・離婚者比率・40代後半の平均賃金の性差、以上10枚の地図パネル(B1サイズ)を参加者全員で見ながら、分布パターンを確認していく。次に(1)合計特殊出生率と同じ分布パターンを示すもの(2)逆の分布パターンを示すもの(3)どちらでもないものに分類する。これらの地図から何が読み取れるか、背景にある要因に言及しながらディスカッションを行う。5、プロジェクトの活動(E):地図パネルの展示(W):ワークショップ (P):発表上海エキシビションセンター(P)8月21日国立女性教育会館(E)8月26日、(W)8月27日石川県七尾市(E)10月9日・11月27日神奈川県高等学校教科研究会社会科部会(P)10月19日男女共同参画センター横浜(W)10月23日広島大学:地理科学学会シンポジウム(P)10月30日静岡県御殿場市(E)10月31日、11月5・15_-_22日(W)1月23日大分県消費生活・男女共同参画プラザ(W)11月14日フェリス女学院大学(E)11月14日横浜市立大学ジェンダー研究会(W)11月25日京都市女性総合センター(E)12月3_-_4日、(W)12月4日男女共同参画センター横浜北(E)1月9_-_14日、(W)1月14日 6、まとめ 各地の自治体や女性センターから、地図パネルの貸出やワークショップの依頼があったことから、地理の有用性を認識してもらうためにも、データマップの有効性と利用法を社会にアウトリーチしていく活動が必要である。[付記]プロジェクトメンバー:中澤高志(大分大)・神谷浩夫(金沢大)・由井義通(広島大)・若林芳樹(首都大学東京)・矢野桂司(立命館大)・寄藤晶子(お茶の水女子大・院)の各氏に対して、記して感謝します。