抄録
地場産のそばを活用して地域振興に取り組んでいる福島県喜多方市(旧山都町)の事例をもとに、その成果と課題を考察した。山都町の宮古集落では古くからそばが栽培され、独特のそばが「宮古そば」として知られ、もてなしのそばとして評判をよんでいた。農家は居間を利用して来客をもてなしていたが、やがてそば食堂を営業することとなり、さらに評判を高めた。このため、山都町では地場産のそばを利用して地域振興に役立たせようとして、「飯豊とそばの里センター」を設置した。山都町商工会が主催した「新そば祭り」や「そば大学」がその契機となった。「寒晒しそば祭り」は特に評判をよぶイベントとなっている。「そば打ち段位認定大会」などのイベントを組み込みながら都市との交流も盛んとなり、地場産そばの人気を高めている。地場産そばの生産を振興するため、地場資源を利用した雪室(そば乾燥調整施設)を増設し、農家のそば栽培を支援しているそば銀行の開設により、農家はそばを雪室に預け、そばの味覚を保持し有効に利用している。このような地場産のそばの利用仁よって一定の地域振興の効果がみられるが地場産のそばが十分に確保されているわけではない。したがって、地場産そばの生産振興をさらに高める農地調整などのシステムの構築が必要になっているといえよう。