日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S311
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ラオス・ヴィエンチャンにおける気候環境の特徴
*朴 恵淑小野 映介
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抄録

1. はじめに
 天水田農業に代表されるように,ラオスでは降雨に強く依存した生業活動が行われている.したがって,雨季における降水量の極端な増減などは生業活動に深刻な影響をもたらす.本稿では,ラオス気象台(Hydrology & Meteorology Stations in Lao PDR)の気象資料をもとに,過去約50年におけるヴィエンチャンの降水量の経年変化および,河川の季節的水位変動を中心に概観する.
2.ラオスにおける地域別降水量の経年変化
 ラオスは,ユーラシア大陸と海洋の間の季節的な温度差により生じる大気循環系および水循環系の影響下にあり,熱帯モンスーン気候に属する.同気候下では,雨季(5月後半~10月前半)と乾季(11月前半~3月前半)が周期的に訪れる.雨季には,インド洋に発達した高気圧によって発生する南西風により降雨がもたらされるが,降水量は地域的に異なる.降水量の顕著な地域差は主に地形条件に起因し,チベット高原からホントワン山脈を経て,インドシナ半島に鳥趾状に伸びる山脈は,南西風の風向や速度に影響を与える.1971~2005年までのラオス主要都市における平均年間降水量は,北部のルアンパバーンで1,381mm,中部のヴィエンチャンで1,647mm,南部のパクセーで2,081mmである(ラオス気象台資料).ラオス南東部,アンナン山脈西麓には年間降水量が2,000mmを越える多雨地帯が広がる一方,北部の山岳地帯の降水量は少ない.ラオスの主要都市における多雨年と少雨年を比較すると,必ずしも一致しない.中部のヴィエンチャンと南部のパクセーにおける多雨年と少雨年を比較すると,逆相関を示す場合が多い.
3.ヴィエンチャンの月別降水量の経年変化
 年降水量の顕著な多少年における月別降水量の変動には,大きな特徴が現れる(図1).年降水量の多い年は,モンスーン初期とモンスーン活発期における降水量が多く,年降水量の少ない年はモンスーン初期とモンスーン活発期における降水量が少ないことが分かる.例えば,年降水量2000mmを超える1966・1980・1999年には,モンスーン初期の5月からモンスーン活発期の9月にかけて多雨を示す.一方,年降水量1,500mmに満たない1963・1977・1985・1991年には,モンスーン初期の5月からモンスーン活発期の9月にかけて小雨を示す.このように,モンスーン初期とモンスーン活発期における気温及び降水量の経年変化に大きな変化が見られる要因についてENSOイベントの影響などが考えられる.
4.河川の季節的水位変動
 熱帯モンスーン気候下では,年間降雨量の9割以上を雨季における降雨が占める.雨季における降雨の集中は,河川水位の顕著な上昇をもたらす.ラオス国内では,メコン河の水位は5月の後半から6月の前半にかけて急速に上昇し,7月前半から10月前半にかけてピークをむかえる.雨季と乾季の水位差は,ヴィエンチャンで8-12mである(ラオス気象台資料).メコン河やその支流の中規模河川は,コラート平原において深い河谷を発達させ,雨季と乾季の水位変動はその河谷内で完結することが多い.一方,平野・平原を流れる小規模河川の中には比較的広い氾濫原を有するものがあり,雨季には河川周辺に浸水域が広がる.コラート平原最北部に位置するヴィエンチャン平野(標高約160~180m)を流れる諸河川においても約5mの季節的水位変動が認められ,雨季の最盛期には河川沿いの標高167m以下の地域は浸水する.浸水の範囲は毎年ほぼ一定であるが,モンスーン活発期に集中豪雨が発生した際には(例えば1966年),河川の水位上昇とともに浸水域が拡大し,天水田稲作に被害を及ぼす.
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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