抄録
ピータンプル工業成長センターは,MP州のプロジェクトでとして計画され,自動車産業とその間連産業,食品加工業などの進出した巨大な工業団地となっている。筆者を含む調査グループは,当該地域の工業発展と農村の変化などに関して,1996年に現地調査を行い,研究成果を岡橋(2002)において発表した。
本研究の目的は,1996年に調査したピータンプル・ハウジング・コロニーを研究対象として,その後の約10年間の変化を明らかにすることにより,インドにおける住宅開発実態について定点観測を試みたものである。
ピータンプル・ハウジング・コロニーは工業地区の南西部に隣接する土地に造成され,既存集落であるピータンプル村からも離れて位置する.工業団地北部にもハウジング・コロニーの建設が予定されているが,現在でも工業団地開発に伴って流入する世帯の大きい受け皿としては当該ハウジング・コロニーがピータンプル村内で唯一の存在である.しかし,ハウジング・コロニーの上水道の問題やコロニーの住宅ストックと住宅の質の問題から,工業に従事する労働者のうち,オフィス部門や管理部門に従事するスタッフクラスの労働者などの高所得層や中所得階層のかなりの部分が,カンパニー・バスや運転手付きの社用車を利用してインドール市から通勤している.そのため,コロニーには,開発地域内の工場で生産工程に就業する労働者や,急成長するピータンプル地区で商業に就く者などが多く入居し,必ずしも工業労働者とその家族に偏った入居者となっていなかった.
ピータンプル・ハウジング・コロニーの開発は, 1986年に建設が始まった。当ハウジング・コロニーは計画面積22.34ha(net land area:20.73ha, A sector=9.55ha, B & C sector=11.18ha)で,土地利用計画の詳細は表1に示すようになっている.AセクターとB・Cセクターの土地利用の詳細はほとんど同じで,住宅が計画面積のおよそ半分を占め,残りを道路が32.96%,オープンスペースが9.20%,学校などの公共施設が7.46%となっている.住宅の区画をAセクターの一部を例として詳細にみると,MIG,LIG,EWSの3種類の住宅があり,MIGはメインストリートに面して,LIGはその内側に,EWSはもっとも奥の場所に配置されている.全体として供給される住宅はMIGが377戸,LIGが808戸,EWSが739戸であるが,セクターによって供給される住宅の種類には大きな違いがあり,AセクターではMIGが46戸,LIGが397戸,EWSが739戸となっており,供給される1182戸のうち62.5%が低所得向けのEWSである.一方,B・CセクターではMIGが331戸,LIGが411戸でEWSの供給はない.
2007年2月の現地調査では,入居世帯の入れ替わりについて調べた結果,単身入居者や賃貸住宅世帯の転出がみられ,持ち家世帯ではあまり入居者の入れ替わりがみられなかった。