抄録
I 研究目的
近年,地球温暖化に伴う亜熱帯ジェット気流の北上によって移動性高気圧が帯状化する傾向にあることが報告されている(大和田・石川,2002)。帯状高気圧時は,日本列島が一週間以上も高気圧に覆われた状態となることから,長期間に渡る沈降性逆転によって大気の移流・拡散が抑えられることが考えられる。これは,都市域ではヒートアイランド強度を強め,高濃度汚染を発生させることとなる。
そこで本研究は,名古屋市における移動性高気圧の形状とNO2濃度分布との関係を考察することを試みた。
II 資料および解析方法
解析に用いた資料は,愛知県,および名古屋市管轄の大気常時観測所における気温,風向・風速,およびNO2濃度の1時間値である。事例として選出した期間は,セル状高気圧時が2002年10月7~13日,および帯状高気圧時が2001年11月17~26日である。
III 結 果
図1は,移動性高気圧の推移に伴う名古屋市のNO2濃度の時間変動を表したものである。この図から,濃度はセル状高気圧時よりも帯状高気圧時において高く推移していることが明らかである。これは,高濃度時においても明確に現れており(図2),0.06ppm以上の高濃度域がセル状高気圧時は中村区,および緑区北西部に局地的に現れているのに対し,帯状高気圧時は名古屋市西部から東部にかけて広く分布していることがわかる。これは,汚染物質が1週間以上に渡り積算され続けた結果であると考えられる。