日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 612
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岡山県久米南町北庄における棚田の灌漑システムと水利組織
*神田 竜也
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抄録

 本報告の目的は、棚田固有の灌漑システムとそれを有する水利組織に着目し、制度の特質と水管理の動向を考察することである。対象地域の山間棚田の卓越地―岡山県久米南町北庄は、用水源の多くをため池に依存し、地域固有の水利が今もなお機能している。北庄中部水利組合では、水番制度のもとで棚田の水管理が行われている。集水域の限られた当地域は、いかに水が重要であったかをうかがわせるものである。このような組織的な管理のもとでなされてきた棚田の水利システムは、たいへん意義深く、貴重な今日的価値を見出すことができるだろう。同時に、現在の水利組織の性格は、表面的には総会、賦課システムのように共同体的性格を特徴づける厳格性のなかにあって、水管理は各田土(灌漑区域)の方針のもとで柔軟に対応され、必ずしも平等的性格を帯びたものでない。今後は、離農による水利組合員の減少、水番制度の中止が懸念され、さらにはため池への災害対策にも注意を払わねばならないだろう。

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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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