抄録
本発表の目的は、「地域多様性レッドデータブック」の作成について提案し、よりよい内容にすべく議論を喚起することである。
「地域多様性」という語は、地理関連学会連合が、細分化されている地理学の核となる概念として提唱したものである。2006年3月にはさいたま市内で「地域多様性と共生社会―世界の持続的発展のために―」と題するシンポジウムも開催され、地域主義の展開と地誌研究、地域資産としての文化的景観、地域の多様性と生態系にかんする講演が行われた。しかし残念ながら、「地域多様性」という語の使用頻度が、その後に地理学内外において大いに高まったとは言いがたい現状にある。
そのような中、今回あえて「地域多様性」という語を用いたのは、それがグローバルからローカルまでのさまざまなスケールで再編成され、場合によっては消滅の危機にさらされているからにほかならない。消滅の危機にある地域および分野を的確に把握し、一般への理解を広める方策を考えたい。