抄録
循環型社会の構築に向けて様々なリサイクルの試みがなされている。一般廃棄物についても、容器包装リサイクル法(容リ法)などリサイクル関連法の施行や最終処分場の残余不足などを背景とし、地方自治体はごみの分別収集とリサイクルを進めている。しかし、適切なリサイクルが行われなければ、かえって環境に悪影響を及ぼすこともある。また、ごみの分別リサイクルには多くの費用が伴い、厳しい地方財政を圧迫するおそれもある。
そこで本研究では、千葉県の香取市・東庄町清掃組合の管轄地域において、ごみの分別リサイクルを実施した際の環境負荷および財政支出の変化を分析した。今回分別リサイクルの対象としたごみは、生ごみと容リ法の対象である「その他プラスチック(その他プラ)」である。一般廃棄物の約30~40%(湿ベース)を占める生ごみのリサイクルは、焼却処理量の削減や効率的なエネルギー回収が期待されることから、近年注目されている。また、「その他プラ」は、他の容器包装系の品目に比べてリサイクルが進んでいない。当該地域では、これらは現在、焼却施設で全量焼却処理されており、今回は現状の焼却処理に係わる環境負荷と財政支出を算出したうえで、生ごみと「その他プラ」の分別リサイクルを導入することによる環境負荷と財政支出の変化を分析した。
まず、現状の焼却処理に伴う温室効果ガス(GHG)排出量は約6,800トン/年であり、最終処分量は約2,100トン/年であった。これを、日本版被害算定型ライフサイクル影響評価手法LIMEで評価すると、2,700万円/年の被害額となる。また、現状の財政支出は約4.1億円/年であった。ここでリサイクルを行うとGHG排出量の変化は約-5,650~1,280トン/年となり、リサイクル方法によっては地球温暖化をかえってすすめてしまうとの結果が得られた。最終処分量は約-660~-190トン/年、LIMEは-1,700~-200万円/年となり、最終処分量と総合的な環境影響では分別リサイクルが有効であるという結果が得られた。最後に財政支出の変化を見ると10,200~4,700万円/年の増加となることがわかった。