日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 420
会議情報

東京都山谷地域における宿泊施設の機能変化
外国人旅行客およびビジネス客向け宿泊施設を対象に
*鈴木 富之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
I.はじめに  本研究の目的は、日本有数の簡易宿所集積地である東京都山谷地域において、「寄せ場」機能や宿泊施設の経営の変化、宿泊者の特性に着目し、宿泊施設の機能変化を明らかにする。 II.調査結果  江戸時代から木賃宿街として発展した山谷は、戦後日雇い労働者の職を斡旋する寄せ場としての機能を有してきた。「ドヤ」と呼ばれる簡易宿所が立ち並ぶようになった。高度経済成長期やバブル期に日雇い労働者が多く流入し、簡易宿所に居住し、土木・建設作業などに従事してきた。しかしながら、バブル経済崩壊や建設現場の機械化・省力化に伴って簡易宿所居住者はピーク時の3分の1に落ち込んだ。そこで、2002年ワールドカップ開催を契機に外国人旅行者やビジネス客向け宿泊施設がみられるようになった。外国人特化型宿泊施設は安価な宿泊料金である。そこでは、海外の宿泊予約サイトによって集客を行い、コインシャワーや有料インターネットなどの新たなサービスを提供している。そのため、利用者の多くは外国人の学生バックパッカーが多く、長期滞在の首都圏観光を可能にしている。また、外国人向け宿泊施設が好意的に報道されたことにより、外部の不動産系資本による簡易宿所が誕生するようになった。ここでは、携帯サイトを用いてビジネス客の集客を行っている。 III.おわりに  以上のことより、山谷の簡易宿所経営者は、インターネットの普及や、外国人旅行客の国際的なイベントや日本文化への関心に注目し、従来の簡易宿所を外国人旅行客向けの宿泊施設に転換したといえる。また、地元資本による外国人旅行客向け宿泊施設の台頭によって、外部の不動産系資本による外国人観光客およびビジネス客向け宿泊施設が新たに流入した。このような低廉宿泊施設の台頭は、都内の他の地域ではあまりみられなかった現象であり、木賃宿街や寄せ場から発展した山谷地域特有の現象である。
著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top