日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 708
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インド、アルナチャル・プラデシュ州(アッサム・ヒマラヤ)の自然と人間活動
*水野 一晴
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抄録


 インドのアルナチャル・プラデシュ州(アッサム・ヒマラヤ)は、ブータンと中国・チベットとの国境に近く、22-24のチベット系民族(細分化すれば51民族)の住む地域である。長らくインドと中国の国境紛争が続き(現在でも中国の地図では中国領)、最近まで外国人の入国が禁止されていたため、未知の部分が多く、神秘的な領域である。現在外国人が入域をするためには、国と州の入域許可書が必要で10日間以内の滞在が認められる。今回は2007年7月の予備調査、とくにディラン・ゾーン地域の自然と人間活動について報告を行う。
 1. 地形と土地利用:住居や農地の多くは、地滑り斜面と崖錐斜面に立地している。それらの地形はその形状と堆積物から住居と農地の立地に有利であると考えられる。
 2. 森林利用:農地の肥料は樹木の落葉のみが利用されるため、落葉は住民にとって重要な財産になっている。森林は森林保護地域と非保護地域に区分され、それぞれ住民による利用の仕方が異なる。また、土地の所有者、同一クランの者とそれ以外の者では落葉の利用権が異なる。
 3. 農業:農耕は標高2400m以下(稲作は標高1700m以下)、牧畜(ヤク)は標高2000m以上で行われている。放牧地は樹木を人為的に毒で枯死させてつくられ、そこではバターやチーズが現金収入になっている。
 4. 住民の定着と農耕の起源:同じアルナチャル・プラデシュ州のジロ地域では、各所の露頭でみられる埋没腐植層の14Cの年代から、2000年前頃には人が定着し、500年前頃には焼畑が盛んであったことが推測される。ディラン・ゾーン地域の水田下から発見された埋没木の年代は、14C濃度から1957年-1961年のものと推測されるが、今後さらに埋没木や埋没腐植層を探し、タワン-ディラン・ゾーン地域で農地が拡大した時代を明らかにしていきたい。

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