抄録
1.はじめに
海岸や湖岸には多くのごみが散乱している。それらのごみの中には出水時により河川から供給されたものが多いという指摘がある(たとえば、村田ら, 1998)。滋賀県坂田郡天野川のごみの実態調査によると、河川には多くのごみが存在しており、そのごみの種類は周辺の土地利用とも関わっていると報告されている(寺尾, 2005)。実際に河川とその周辺を観察すると、特に橋とその付近にごみが集中的に投棄されているのを見かける。
ところが河川の橋付近に散乱しているごみについて詳しく調査された研究例はほとんどない。
そこで本研究では滋賀県彦根市を流れる犬上川の犬上橋周辺の河道に捨てられたごみの種別、分布を明らかにすることにした。
2.調査地域・調査方法
犬上橋は滋賀県彦根市を流れる犬上川にかかる犬上橋付近で行った。犬上橋は歩道はなく、片側一車線で自動車が対面通行することが可能である。調査期間は2007年9月6日から12月1日である。河道内に落ちているごみの供給源としては1.上流から流れてきた古いごみと2.橋の上から投げられた、もしくは河道内直接持ち込まれた新しいごみがあると考えられる。本研究では2.の新しいごみを対象とする。そこで、まず調査開始時にすでに散在している古いごみを全て回収した。その後74日間調査を行い、午前9時から午前11時の間に調査区画内に新たに持ち込まれたごみを回収した。回収と同時にごみの位置をクリノメーターを用いて記録した。なおこの間、出水などで上流からごみが流れてくることはなかった。
回収したごみは「ビニール・プラスチック類」紙類」「金属類」「ガラス・陶器類」「木類」「布類」「袋ごみ」「その他の複合材」の8種類に分類した。なお「袋ごみ」とは、ビニール製の袋に様々なごみがまとめられているものとした。
3.結果・考察
調査期間中に計215個のごみを回収した。回収したごみの分布図を図1に示す。橋付近に散乱するごみは、橋から遠ざかるにつれて少なくなる傾向が見られた。また、橋の右岸側には合計個数の56.7%のごみが分布していた。また、右岸で目立っていたのは「袋ごみ」であった。
この原因として橋の北東端に信号機があるため信号待ちをしている車から投げ捨てやすいこと、左岸側に比べ右岸側に住宅が密集していることとの関係が考えられる。
引用文献
寺尾美幸(2005)滋賀県天野川におけるごみの実態とその供給源
村田ら(1998) 大阪湾における海洋環境整備事業と浮遊ごみ分布予測システムの開発,土木学会第53回年次学術講演会,VII247,494-495
