日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 304
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宮古島から採取したビーチロック試料の較正年代と後期完新世の海水準変動
*小元 久仁夫
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抄録

【研究目的】
宮古島のビーチロック試料に関する14C年代は、Kawana and Pirazzoli(1984), 堀ほか(1994), 小元(1995, 2005, 2008), 河名(2003), Omoto(2006)などにより報告されている。14C年代を暦年代に較正する際、安定同位体比の測定は不可欠であり(Stuiver and Polach, 1977)、また試料が海洋生物の場合reservoir correctionが必要である(Stuiver and Braziunas, 1993)。これまでの報告では安定同位体比による14C年代の補正やreservoir correctionの補正が十分に行われていなかった。このため本報告ではビーチロック試料について安定同位体比を測定しconventional ageを求め、この年代を暦年代に較正するる際にreservoir correctionを行った。このようにして得た暦年代にもとづき宮古島のビーチロックの形成年代と後期完新世における海水準変動について検討したのでその結果を報告する。
【研究方法】
宮古島の21地点からビーチロックに含まれる貝化石、化石サンゴおよび石灰砂岩を90個採取した。試料採取地点の高度と断面測量はレーザーレベルと巻尺を使用して行い、高度は平均海水面(TP)に補正した。試料の14C年代と安定同位体比(δ13C)は、日本大学年代測定室でβ線計測法により、安定同位体比はIsoPrimeにより測定した。reservoir correction値としてR=400, ΔR=24~69年(Omoto, 2007および本研究)を使用しIntCal 04プログラム(Stuiver and Reimer. 2004)により暦年代を求めた。
【考察および結論】
宮古島のビーチロック試料で、もっとも古い年代を示したものは宮古島南部のスガーネから採取した化石サンゴ試料の4,223yrs cal BPであり、もっとも新しいものは”Modern”である。この結果から宮古島ではビーチロックが4,200yrs cal BPころから形成されはじめ、ごく最近まで形成された。 ビーチロックの形成期を±2σ(95.4%)の誤差範囲で重複する期間とみなせば、宮古島では4,220~2,890y, 2,440~2,210y, 1,480y~現在まで合計3回ビーチロックの形成期があった(図1)。 ビーチロックの高度と暦年代から後期完新世の海水準変動について考察した結果、宮古島東部の大浦田原海岸と西部の狩俣海岸では一部離水したビーチロックがあり若干の隆起を示唆する。しかしその他の海岸では、ビーチロックが現在でもほぼ潮間帯に位置しているため(図1)、後期完新世の海水準は約4,200年前から現海水準とほぼ同じであったと推定される。この結果、宮古島では井関(1974, 1978)が推定した2,000y BPごろの低位海水準―いわゆる「弥生の海退」―は存在しなかった可能性が高い。
【参考文献】
紙面の都合により記載省略。

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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