日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1004
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仙台市におけるソメイヨシノの開花過程と土地利用の関係について
*西城 潔和田 枝里
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抄録

1.はじめに 近年、ヒートアイランドの影響により都市部でソメイヨシノの開花日が郊外部よりも早まることが指摘されている(たとえば松本ほか,2006)。しかし従来の研究において、開花日以後、満開日に至るまでの開花の進行過程を観察し、気温や土地利用との関係を検討した例は少ない。本発表では、2007年4月に仙台市内でソメイヨシノの開花調査結果をもとに、開花日から満開日に到る開花の進行過程と気温との関係、それに対するヒートアイランドの影響について考察する。 2.調査対象地域  調査地点は、仙台市の中心市街地をほぼ東西に横切るように7地点設定し、西に位置するものから順に地点1~7  とした。地点3.4は都心域、地点1・2・5・6は都市化進行域、地点7は田園地帯に位置する。また地点4と7では、開花前後約40日間の気温観測を行った。 3.開花過程の観察 本研究では、開花がどの程度進行しているかを評価するため、観察木全体を眺めた時に何割程度が開花しているかを10段階(1~10)で判断し、その値を「開花度」と定義した(観察木全体で50%程度の花が開いていると判断されれば開花度は5とする)。各地点で4~5本の観察木を選定し、個々の観察木の開花度を平均したものを、その地点における平均開花度とした。観察は、著者の一人和田が、2007年4月6日~18日の期間の偶数日に計7回実施した。調査地点4・7における気温観測は、2007年3月16日~4月23日までの期間、自記温度計により行った。温度計は、観察木の一本を選んで根元から約1.5mの高さの樹幹部に北向きに設置し、10分間隔で測定した。 4.結果と考察 図1には地点ごとの各観察日における開花度の推移を示した。 開花は都心域の地点3・4で早く、郊外へ向けて順次遅くなる。気温観測の結果は、ほぼ一貫して地点4の日平均気温が地点7のそれを約1.0℃上回っており、ヒートアイランドが開花日の遅速をもたらしていると考えられる。また開花度の変化をみると、地点3・4ではほぼ1.0/日の割合で安定的に増加しているのに対し、それ以外の地点では日による増加率の変動が著しい。地点4と7を比較すると、前者では日平均気温の変動幅が小さく、開花度が安定的に増加するという結果をもたらしていると考えられる。こうした気温の変動性およびそれに連動した開花度の進み方の違いには、ヒートアイランドが影響を与えていると考えられる。

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