日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1010
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十日町の積雪と日本海海面水温との関係
*安田 正次
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抄録
はじめに
近年、日本海側地域において積雪量が減少しており、動植物の分布の変化やスキー場の閉鎖などの影響が報告されている。ところで、日本海側の降雪は、一般に冬期西高東低の気圧配置となって大陸から乾燥した低温の季節風が日本海上空に流れ込み、日本海から大量の水蒸気を供給された後、脊梁山脈にぶつかり上昇するときに発生すると考えられている。
そこで、降雪の因子の一つと考えられる日本海の海水温と、代表的な多雪地域である十日町の積雪量の関係を考察し、日本海側地域における積雪量減少の原因を検討する基礎的な資料を得る事を目的とする。

使用資料
積雪量の指標として、日本海側多雪地帯として代表性を持ち、永年同一の方法で観測が行われている森林総合研究所十日町試験地の観測資料から、年最大積雪深を積雪量の指標とした。海水温のデータは、気象庁の日本海平均海水温データから日本海表層海水温、および輪島測候所の沿岸海水温の1月から3月の平均値を使用した。気温の経年変化を調べるために、輪島測候所の地上気温の1月から3月の平均気温を使用した。

結果と考察
図1に日本海の平均海水温と十日町の積雪深の経年変動を示した。海水温と積雪量の変化率を一次回帰分析によって求めたところ、海水温は100年間で2.4℃の上昇傾向に積雪量は100年で90cmの減少傾向を示していた。
日本海の平均海水温と十日町の積雪深の相関係数は-0.514で有意水準0.01以下の強い負の相関があり、海水温が上昇すると積雪量は減少する事が明らかとなった。図1を見ても、日本海全体の海水温が上昇傾向にあるのに伴って十日町の積雪量が減少していることがわかる。
以上から、海水温の上昇にともなって積雪量が減少しているという現象が明らかとなった。これは、これまでに知られている、海水温度が高く寒気の温度が低いとき積雪量が増加する(菊池 1995)という知見とやや矛盾する。そこで、輪島における気温と海面温度の差と積雪深の関係を検討したが、関連は認められなかった(図2)。次に、輪島の気温と海水温度の関係を検討したところ強い正の相関が認められた(図3)。
冬期の日本海では、海水の温度よりも大気の温度が低いため、熱は海水から大気へ移動している。つまり、海表面は大気によって常に冷却されているのである。そのため、気温の変動が海水温の変動へ影響を及ぼしている事が考えられる。そのために、海水面温度が低い時に積雪量が多くなると考えられた。
以上から、積雪量と海水温の関係を明らかにするためには、大気によって冷却されている海表面の温度ではなく、海面よりもさらに下層の海水温をデータとして用いる事が必要であると考えられた。
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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