日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 102
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南部アフリカにおける降水量の年々変動と近年の季節変化異常
*森島 済
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抄録

はじめに  南部アフリカでは、近年雨季における降水量の変動性が高まると共に、降水強度の減少と干ばつ傾向の強まり、広域化が顕著となっていることが報告されている(Fauchereau et al. 2003; New et al. 2006)。本研究では、これらの中で、特に近年における干ばつ傾向と降水の季節変化との関係を明らかにすることを目的としている。  南部アフリカにおける降水量データは、一部地域を除き、年々変動や季節変動を議論する上で、時間的にも空間的にも得られにくい。そこで、本解析においては、1979年から2007年までのCMAP(CPC Merged Analysis of Precipitation)のenhanced dataを用いた。このデータは半旬ごとの日平均降水強度として得られるため、これを単純に5倍することでグリッド毎の半旬降水量とした。東経5度から55度、南緯0度から37.5度を解析領域とし、この地域の年降水量のトレンドを調べた。このトレンドと年々の降水量の季節変化との関連性を議論するために、同領域、期間においてEOF解析を行った。 年降水量のトレンドと変化の特徴  年降水量のトレンド分布には、南緯10度を中心とする大陸の西岸地域からマダガスカル東岸にかけて、顕著な減少傾向が認められる。大きな減少傾向を持つ地域を通る年降水量の緯度-時間断面図(図1)を作成すると、大陸上を通る断面には1990年代中頃を境界とした急速な降水量減少が南緯10度付近を中心として生じていることがわかる。500mmと1,000mmの等雨量線に注目すると、500mmの等雨量線は、年々の変動はあるものの、北偏した場合であっても南緯20度付近に留まっている。これに対し、1,000mmの等雨量線は1998年以降北方にシフトしていることがわかる。 降水の季節変化とその年々変動  EOF解析の結果、第1モード、第2モードに南部アフリカの降水帯の季節変化に関連する成分が抽出された。第1成分の空間構造は、南部アフリカのほぼ全域で負値を示しており、その中心はアンゴラからマラウイ、マダガスカルへと広がる(図2:解析対象地域以外においても相関係数を計算し、因子負荷量分布図を作成している)。時係数の負値は、11月から4月に現れ、これに対応して降水量の増加となることから、南部アフリカほぼ全域における雨季を示す成分と考えることができる。この季節進行の経年変化には、1987年以降で負値の絶対値が小さくなる傾向が認められ、さらに負値を示す期間、換言すれば雨季の期間が短くなっていることが認められる。一方、第2モードは雨季を示す第1モードの移行期間(10月~11月及び4月~5月)に南緯20度以北で降水量が増加する成分を示し、この降水期間は1998年以降短期化し、さらに強度も弱まっている。  これらの成分に現れる1987年、1998年以降の季節異常と年降水量の経年変化はほぼ一致している。 参考文献 Fauchereau N., S. et al 2003. Rainfall Variability and Changes in Southern Africa during the 20th Century in the Global Warming Context. Natural Hazards, 29: 139-154. New, M. et al 2006. Evidence of trends in daily climate extremes over southern and west Africa. J. Geophys. Res., 111: D14102, doi: 10.1029/2005JD006289. *本研究は、文部科学省科学研究費補助金・基盤研究 (A)(研究代表者:水野一晴)「南部アフリカにおける「自然環境-人間活動」の歴史的変遷と現問題の解明」の一環として行われた。

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