日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 209
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沖縄系南米出身者の日本における移動経歴に関する研究
横浜市鶴見区在住者を事例に
*清水 沙耶香
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キーワード: 移動, 日系人, 沖縄, 鶴見
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抄録

本研究の対象地域は,横浜市鶴見区である.横浜市鶴見区は川崎市に隣接する横浜市内の北部に位置し,東京湾に面する.鶴見区の東部にある潮田地区,仲通地区には沖縄出身者の集住地区が形成されている.本稿では,南米からの帰還移民であることに基づいて,「日系人」を「南米へ移民し定住経験のある日本人,およびその子孫」と定義する.そして「日系人」のうち,本人または日系人としての祖先に沖縄出身者を含む日系人を「沖縄系日系人」,本人または日系人としての祖先が本土出身者である日系人を「本土系日系人」とする. 本研究では,日系人に対して,個人の移動動向に関する聞き取り調査,およびアンケート調査を行なった.沖縄にルーツをもつ日系人が鶴見区に集中する要因を明らかにするため,対象者を沖縄にルーツをもつ者,本土にルーツをもつ者と二分し,比較した.調査は,横浜市鶴見区周辺(鶴見・横浜地区)と,名古屋市港区周辺(名古屋地区)で行なった.名古屋地区に居住する日系人を調査対象としたのは,比較対照により,鶴見・横浜地区の日系人の居住地選択における特徴をより鮮明につかむことができると判断したためである.調査対象者は,全部で67人である.そのうち沖縄系日系人は20人であり,全て鶴見・横浜地区在住である.本土系日系人は47人であり,そのうち鶴見・横浜地区在住者は15人,名古屋地区在住者は32人である.調査結果は,聞き取りおよびアンケート結果の詳細から,抽出し,分析,考察を行なった. その結果は以下の通りである.まず,名古屋地区本土系日系人,鶴見・横浜地区本土系日系人,鶴見地区沖縄系日系人3者に共通するのは,「仕事」に基づく選択と,血縁,友人関係という「人的紐帯」の重視である.それに加え,鶴見・横浜地区本土系日系人と鶴見地区沖縄系日系人に共通して見られるのは,仕事の中でも特に「電気工事」,さらに「鶴見」に関する理由が挙げられた.そして,鶴見地区沖縄系日系人には「沖縄出身者の集住」に起因する理由と,人的紐帯の中でも「沖縄の地縁」による結びつきという理由が見られた. 調査結果をふまえた上で,居住地選択において特に重要と考えられる以下の6つの要素を抽出した.(1)「仕事」,(2)「人的紐帯」,(3)「電気工事業」,(4)「鶴見の地理的要素」,(5)「沖縄の地縁」,(6)「沖縄出身者の集住」,この6つの要素をふまえ,本章では沖縄系日系人が横浜市鶴見区に集中する要因を考察する.これらの6つの要素は,独立するものではなく,相互に関係をもつ.さらにこれらの6つの要素の関連性をふまえると,この6つの要素が生じた背景を,「日系人としての要因」,「沖縄に起因する要因」,「鶴見の場所に起因する要因」から明らかにすることができる.

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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