日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1023
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戦前期における南洋7市街地に関する復元地図の作成
*宮内 久光
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抄録

1.はじめに  本発表の目的は,戦前期に南洋と呼ばれた地域にあった7つの市街地を対象に,家屋レベルまで記載された大縮尺地図を復元・作成し,現在の地図や画像データの上に重ね合わせて,市街地の変化を明らかにすることである.ここでいう南洋とは,いわゆる内南洋(南洋群島)と外南洋を合わせた地域である.  近代期における大縮尺の市街地図として,木谷佐一編(1937)『大日本職業別明細図』が知られている.これには,日本本土の各都市のほか,台湾,朝鮮,満州の主要な都市の地図が掲載されており,公共施設や商業施設などが記載されている.これにより,近代期における各都市の構造などが明らかにすることができる.しかし,この『大日本職業別明細図』には南洋と呼ばれた地域の市街地図はない.  南洋の市街地を記録した地図は,略図レベルのものしか存在せず,都市地図の空白地である.近代期に南洋の市街地図が作成されていない以上,今回作成する地図は復元地図である.幸い,市街地図を復元するための協力者や協力組織,各種資料を得ることができたので,研究の第一段階として,戦前期の南洋7市街地の復元地図を作成し,近代期を対象とする歴史地理学や都市地理学の基礎資料として提供したい. 2.復元対象市街地  今回復元する市街地は,南洋庁サイパン支庁のガラパン,テニアン,ソンソン,パラオ支庁のコロール,トラック支庁の夏島中心部,ポナペ支庁のコロニア,およびフィリピン・ミンダナオ島のダバオである.いずれも戦前期に多くの日本人が居住し,彼らが市街地形成に大きな役割を果たした都市のものである. 3.復元方法  家屋レベルの詳細な市街地の復元は次のように行った. _丸1_米国公文書館所蔵の米軍撮影空中写真(1944年頃)を対象市街地について収集し,これをGIS上で位置情報を与え,幾何補正を加えた後に原図とした.これをもとに,道路や建物などをトレースして基本図を作成した. _丸2_資料などをもとに,基本図上に公共施設などの名称を書き加えた. _丸3_それをもとに,戦前期に市街地に居住していた人々に聞き取りを行い,商店,飲食店,料亭など場所と名称を地図に書き加えて復元地図を作成した. _丸4_GIS上で,復元地図を現在の大縮尺地図や画像データと重ね合わせて,市街地の変化を明らかにする.なお,必要に応じて現地調査を行い,現在の大縮尺地図において施設名も記入する.

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