日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S204
会議情報

産学官連携による環境地理教育の実践
*元木 理寿
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

はじめに  近年、環境問題への意識の高まりから以前にも増してNPO・NGO等による地域の環境保全の実践活動、清掃活動などの取り組みが広がっている。筆者もこれまで埼玉県熊谷市において、「熊谷の環境を考える連絡協議会」主催による荒川河川敷清掃活動や「くまがや地域通貨研究会スカベンジャー」主催の清掃活動に参加してきた。このような活動は地域の環境活動としてしてだけでなく、様々な立場の人たちとともに地域の自然および社会環境を観察したり、考えたりできる場としても重要であると考える。 本報告では、産学官連携による環境教育の一環として、「ひろえば街が好きになる運動」への参加と地域連携の取り組みについて報告する。 ひろえば街が好きになる運動  ひろえば街が好きになる運動(以下、「ひろまち運動」とする)とは、(株)日本たばこ産業(以下、JTとする)が2004年5月3日より始めた清掃活動である。具体的には、自治体、学校、ボランティア、各催事の実行委員会や参加団体などが、それぞれの催事などに参加する人や見に来た人とともに催事の行われている場所においてごみを拾う活動のことである。それぞれの地域の催事会場に拠点を設け、スタッフが清掃活動への参加を促し、応じた参加者には清掃用具を貸し出し、ごみを拾い集めて拠点に持ち込んだ参加者には記念品を手渡すというスタイルをとっている。 「ひろまち運動」は埼玉県においても広がっており、2007年度には18,146人が参加している。熊谷市では、7月20日~22日にかけて行われる祇園祭「うちわ祭」の中で、2006年度より「ひろまち運動」を開催することとなった。 熊谷市うちわ祭における「ひろえば街が好きになる運動」 実施概要 熊谷市では、2006年度はJTが主催となり、協力として立正大学、熊谷市環境部、熊谷の環境を考える連絡協議会、が参加する体制の下で実施した。2007・2008年度は立正大学、JT、熊谷市環境部、が共催の形で実施した。実施日時は7月21、22日12:00~17:00であり、熊谷市コミュニティ広場に拠点を置いて活動を行った。  学生たちは、熊谷市うちわ祭りにおける「ひろまち運動」の中心スタッフとして活動した。イベントの拠点となるブースでは受付業務や参加方法の説明と清掃ツールの配布を行った。また、その周囲の清掃活動を行うとともに、拠点から半径500~1,000m圏内を周回し、お祭りを見に来られている方々に参加を促したり、ごみを収集して廻った。参加者によって集められたごみについては、熊谷市のごみ分別方法に準じて「可燃ごみ」、「カン」、「ペットボトル」専用のごみ箱を設置し、学生スタッフが説明を行った上で可能者に分別してもらった。最後に、収集したそれぞれのごみについては、熊谷市クリーンセンターにより回収・処分をした。   これらのことからも産学官連携による技術的進歩や提言については考慮すべき点はあると考える。また、企業の広告になってしまうのではないかという懸念の声もあるが、産学官のそれぞれの立場から意見を出し合い、地域環境への貢献、地域連携に向けての改善点を出し合い、補っていければより発展的である。産学官連携による「ひろまち運動」への参加は、活動としての単なる体験を重ねるだけでなく、地域の現状と問題点を捉え、解決に向けてのアプローチを身につける機会となるため、環境教育実践の場として有効であると考える。

著者関連情報
© 2009 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top