日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 420
会議情報

サンゴ礁保全において地理学が果たしてきた役割
*中井 達郎長谷川 均鈴木 倫太郎安部 真理子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 1980年代以降、日本のサンゴ礁地域では、さまざまな開発行為が計画され、または実施されてきた。このような状況に対して、さまざまな地理学関係者が、サンゴ礁保全の立場から、NGO/NPOなどにとともに、現地調査やそれに基づく議論、あるいは提言を行ってきた。下表は、主な開発事業(自然保護問題)と地理学関係者がかかわった委員会、現地調査、出版物等について表に整理した。
 サンゴ礁保全については、生物・生態学関係の研究者などもかかわりを持っているが、以下の点で、地理学が果たす役割があると考える。

(1) 地理学は生物・生態学では扱うのが困難な101m以上のスケールの現象を扱うことができる。
(2) そのために、各種事業が実施される現実の地域において、その地域のサンゴ礁生態系の空間構造の把握と評価、事業による影響の空間的分析を行うことが可能となる。
(3) このスケールで見ることによって、生物群集系のみならず、その基盤となる物理環境系(海水流動、堆積物移動等)を含め、生態系に内在する関係性をむ総合的に把握、分析することが可能となる。
(4) さらにこのスケールでは、海域のみならず、陸域(集水域)を含む系の議論が可能となる。
(5) それらの作業を行う上で、地理学的手法、すなわち地図、GIS、画像解析が極めて有効である。
(6) それらの手法は、生態系の現状や変化の予測について、市民やマスメディアなどと共有する手法としてもきわめて有効である。

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top