日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 504
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地図作製のデジタル化にともなうGISソフトの現状と展開
*赤沢 正晃
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抄録
1. 研究の目的
 地理学の基礎資料となる地形図等に関わる「地理空間情報活用推進基本法」が2007年8月施行され、日本で公的に発行されるすべての地図はデジタル化されて供給されることになった。これに伴ってGIS・GPSの利用推進が積極的に行われている。しかし地図のデジタル化は国家事業として10年前に同じような施策において進められたが、その時は地方公共団体が動かなかったため、大縮尺の地図のデジタル化は進まなかった。今回の地図のデジタル化は測量・地図作製企業の技術業務を大幅に変化させる事柄であり、一企業の存続に大きく関わる問題である。企業のほとんどは小規模経営で、デジタル化に対応した新たな機材導入と、技術者養成のための資金的問題が内包されており、法律制定が行われても地図作製を担う多くの企業にデジタル化が浸透していないのが実状である。本研究の目的は、地図のデジタル化に本格的に取り組みかねている一企業の実状を捉え、GIS・GPSの利用を見越した今後の展望を行う。なお、小規模企業の経営にプラスの効果を及ぼすであろうGISソフトの比較および簡易GPSの精度と活用の有効性についても、実験を実施して検証する。
2. 研究方法と目的
 GISは業務の効率を向上させるためのシステムであるが、通常のシステムと違い帳票データだけではなく地図データにリンクさせるため複雑なシステムである。導入する担当者に地図データの知識がないと、運用に支障が出るはずである。そこで本研究では運用における問題点を拾い出すところから始めた。同時にGISソフト・画像ソフト・地図編集ソフトの検証を行う。簡易GPSを国土地理院発行の1/25,000地形図の徒歩道で使用した際、さまざまな現象のデータを取得するに至った。この現象の原因を探るため平地の公園内の遊歩道で検証した。これらの得られた成果から大縮尺デジタル地図を効率よく作製するための小規模企業を取り巻く環境に恒常的になじめる技術的方法を見極め、小規模測量・地図作製企業の能力、つまりそこに所属する技術者数・保有機器・資本力で可能となり得るシステムに導くこととする。
3.ツールの検証方法と分析の進め方
 3-1 GISソフトの検証と分析
 本研究ではデジタル地図の在り方自体を深く追求するものではなく、一般的なデジタル地図を扱い平均的な作業フローを仮定してそれに基づく検証と分析を行う。これらのGISソフトを使い業務を完工するために設備費用がどの程度必要であるかということから始め、最良の組み合わせを導く。
 3-2 簡易GPSの検証と分析
 簡易GPSはMSASSを受信することにより、DGPSで移動計測の精度が向上し、計測時刻と同じ電子基準点の成果による後処理解析により信頼性の高いデータが得られるまでに進化している。さらに今年秋に打ち上げが予定されている準天頂衛星が運用されると各メーカーがそれに対応し、さらなる精度の向上が期待される。また当初の構想の通り地上衛星が整備されると、ビルの谷間や地下空間においても使用可能なため利用範囲に隙間のない機器になり得ると考えられる。
 これまでの検証で1/2,500地図に使用可能と考えられるデータを取得しているが、安定性に不安があった。そこで公園の遊歩道において、移動観測を繰り返し行い平均的な傾向を探る。
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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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