日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P921
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東京大都市圏における国際空港へのアクセシビリティの変化
東京国際空港の再国際化と成田国際空港へのアクセス改善に伴う
*田中 耕市
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抄録

I. 研究目的
 2010年は,東京国際空港(以下,羽田空港とする)の再国際化などによって,首都圏における空港を取り巻く状況の激変が見込まれている.羽田空港の再国際化は,東京都心から海外都市へのアクセシビリティを飛躍的に向上させると期待されているが,運航される路線や便数は未だに正式決定していない.本研究では,東京大都市圏における国際空港へのアクセシビリティの変化を測定して,海外主要都市へ訪れる国際線利用者が享受しうる利便性の変化を定量的に明らかにする.そして,利用者の利便性の側面からみた羽田空港に就航すべき国際線の配分について検討する.

II. 首都圏空港が抱える問題
 1978年に新東京国際空港(現・成田国際空港;以下,成田空港とする)が開業して以降,国際定期便は成田空港に移転して,羽田空港は国内線用(一部の国際チャーター便を除く)として運用されてきた.しかし,滑走路の問題から成田空港の離発着数に著しい制限があるため,東京という大都市を背景にした大きな需要を賄うことができていなかった.そのようなボトルネックの状態が続いた結果,近年では香港(Chek Lap Kok)やソウル(Incheon)といった近隣海外都市に東アジアのハブ空港の地位を奪われつつある.加えて,羽田空港においても国内線の需要の増加に対応できていないため,首都圏第三空港の建設がたびたび議論されている.

III.国際空港へのアクセシビリティを変化させる要因
 2010年の首都圏においては,空港へのアクセシビリティを変化させる以下のようなイベントが予定されている.
1) 羽田空港の再拡張に伴う再国際化(10月予定)
4本目となるD滑走路および国際線ターミナルの建設される.
2) 新ルート経由の京成電鉄の新特急による成田空港へのアクセス改善(7月予定)
日暮里駅から成田空港駅への最短移動時間が36分に短縮される.
3) 茨城空港の開業(3月予定)
自衛隊百里基地を民間運用する.

IV.羽田空港の増分スロット(離発着枠)の配分
 D滑走路の運用開始によって新たに増加する年間約10万回のスロットのうち,約3万本が国際線へと割り当てられる.その内容については未だに正式には決定していないが,比較的近距離の国際線への割り振りが予定されている.しかし,2009年12月には,アメリカ合衆国とのオープンスカイ協定の締結によって,一日あたり8往復が同国への便に優先的に割り振られた.

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