日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 110
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沖縄県における流通再編とヤンバル地域,島嶼部への影響
流通再編と地域への影響(1)
*土屋 純
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抄録

 沖縄県では,沖縄本島南部の沖縄コナベーション地域において流通システムの上位集中が進んでいる.その要因として,_丸1_サンエーなど地元資本の小売チェーンの発展,_丸2_イオンなど他地域の大手流通資本の参入,_丸3_米軍基地返還などによる出店用地の増加,_丸4_商店街を中心とした既存の商業集積の衰退,の4点を指摘することができる.他地域資本や地元資本の大手小売チェーンは,浦添市などに商品配送センター,食品工場などを展開することによって,沖縄コナベーション地域における競争激化に対応している.
 このような沖縄コナベーションにおける流通再編は,沖縄本島北部のヤンバル地域や島嶼部にどのような影響を与えるのであろうか.
 第一に,地元住民の広域的な買物行動を促進させている.例えば名護市にはロードサイドショップが展開しており,若い世代を中心としてそうしたチェーン店で買物する傾向が高まっている.
 第二に,地元の顧客を奪われた結果,地元小売業の経営悪化が顕著になりつつある.特に,地域住民の出資によって運営される共同売店は,ここ10年間で閉鎖が進んでいる(小川 2008).一部,茶など特産物の販売し,地元以外の顧客を確保している共同売店では売上を保持しているが,多くの共同売店では売上が低下しており,高齢者にとって重要な買物先である共同売店が益々衰退してしまうのではないかと懸念されている(小林 2003).
 第三に,中小小売業,共同売店では,商品調達先の消失も顕在化しつつある.小売チェーンによる商品調達システムの構築は,中小卸売業の淘汰を導いており,中小小売業や共同売店の商品調達先は減少しつつある.品揃えの魅力低下,販売価格の高騰が顕在化するのではないかと心配されている.
 第四に,こうした地域流通の衰退が進展している中,生協の共同購入や農協店舗といった新たな流通チャネルも発展している.生協の共同購入では,週に一度の宅配が実施されており,若い世代を中心に食料品購入が増加している状況である.また,各地にある農協購買部の店舗では,生鮮野菜を中心とした供給を展開しており,島嶼部でも特売品を展開しており,地域住民に支持されている.こうした供給主体は今後どのような役割を演じるのか,その動向が注目される.
 本研究では,沖縄県における流通再編の概要を紹介するとともに,周辺地域における既存の流通システムの衰退と,農協,生協の役割について検討したい.特に,コープおきなわによる共同購入の地域展開について詳細に発表し,周辺地域における協同組合の可能性について検討できればと考える.さらに,ヤンバル地域や島嶼部という地域特性(ローカリティ)が,流通再編のなかでどのように残存しているのかについても検討できればと考える.

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