日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1308
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ジオパークにおける持続可能な観光のあり方
九州に位置するジオパークでのアンケート調査から
*深見 聡
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抄録

本稿は、ジオパークで展開される持続可能なジオツーリズムのあり方を提示することを第1の目的とし、真にジオパークにおける地域の発展につながるための諸問題について提起しようというものである。なお、ジオパークと観光振興に関するアンケート調査を九州にある4か所のジオパーク(島原・天草御所浦・阿蘇・霧島)で実施した結果を基礎データとしており、その速報的な公表は、深見・有馬(2011a;2011b)ですでにおこなった。
アンケートの結果を踏まえ、ジオパークにおける持続可能な観光を確立していくには、観光研究からみた課題と、自然地理学・地学からの成果とを互いの専門家が共有するところから始めていくことが肝要と考える。その過程で、地域住民に専門家と同等かそれ以上に合意形成に関する場面に積極的に参画してもらい、ジオパークとジオツーリズムに関するボトムアップ的な機運の高まりを追求していくべきである。つまり、それぞれのジオパークのイメージに立脚したうえで地域住民の主体性といった、ジオパークを支える動きが高まることで、真に地域に根づいたツーリズムの展開が可能となろう。観光研究を専門におこなう者は、ジオパークやジオツーリズムの定義に立脚してジオサイトの解説の難易度やルートの設定に、観光研究の見地から率直な意見を提示していきながら、より特徴ある観光形態へと進化させていく責務がある。
本稿では、ジオパークにおける持続可能な観光のあり方を探るべく、観光客を主対象としたアンケート調査結果に依拠し、その展開にあたって留意すべき課題の提示を目的として論を進めてきた。観光研究は学際性が強みといわれ、とりわけ観光地理学は場所や地域特性といった点に関して強みを発揮してきたが、ジオツーリズムについての先行研究は、事例そのものが新しいとはいえ、意外に少なかった。一方で、専門家が評価する露頭や岩石・地形(地学的な価値の高いジオサイト)が、必ずしも観光客の指向性にそぐわないケースも往々にして考えられる。ジオパークの場合も、地域住民が紹介したいと思うジオサイトや、観光客が訪れてみたいと感じるジオサイトという観光研究的な視点からみた需給の均衡を事前に把握しておくことで、ジオパークの構成要件である「地域の持続可能な社会・経済発展」への方向がみえてくると考えられる。

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