日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 320
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韓国のセマウル運動が民泊集落の形成に果たした影響
*鄭 玉姫
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抄録
韓国における民泊とは,おもに農漁家が自宅の一部を客室として宿泊客に提供し,経費を受領することである.一般に食事は提供しない.こうした民泊は,「農漁村整備法」によって定められており,民泊経営を希望するものは,各自治体による民泊事業者指定を受ける義務がある. 民泊集落は,海水浴場と景勝地,山岳地帯といった観光地に多く分布しており,民泊は,新たな経済活動として住民側に認識されている.農漁村の民泊集落への変貌を考える際,1970年代に入り韓国政府が農漁村の近代化を目的に推進した「セマウル運動」が重要な役割を果たしていると考えられる.したがって,「セマウル運動」の関連事業の推進から,民泊集落の形成に果たした役割を明らかにすることが本発表の目的である.民泊経営は零細な産業活動に従事する住民にとって新たな経済活動になったため,積極的に取り組まれてきた.夏季の農作業と民泊の労働力とが競合しないことと同時に,食事を提供しないことが,住民の民泊への参入を容易にした.また,尚州集落は2003年まで国立公園の指定地域に含まれていたために,大規模な観光開発が抑制されてきたことも尚州集落の民泊集落への変貌を遂げる要因になった.尚州地域では,1980年代に入り,国の政策としての「セマウル事業」が,集落内道幅拡工事と海水浴場開発に加えて,民家の家屋改造事業として推進された.これは,海水浴場の環境造成とともに,大都市から遠隔な尚州集落において,民泊集落の形成に多いに寄与した.こうした事業に参加した住民による民泊経営の進展は,結果として住民の経済的地位向上につながった.
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