日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P727
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水害氾濫域における衛星データおよび標高データを用いた 環境特性解析
*後藤 健介磯 望黒木 貴一宗 建郎黒田 圭介
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抄録
近年、豪雨による内部水害を含む河川氾濫が多く発生しており、効果的な河川整備の重要性が高まっている。しかし、河川整備を急ぐ必要がある箇所は、氾濫後に判明することもあり、氾濫域における環境や地形などの特性を整理していくことが重要になってくる。本研究では、衛星データおよびDEMデータを用い、実際の水害時の氾濫域における地表流水の溜まりやすさ等の地表流水の水文状況を調べ、河川整備に有効となり得るデータを検討した。
対象地は2009年に発生した那珂川の水害氾濫域、および2003年に発生した御笠川の水害氾濫域とし、衛星データはTerra/ASTERの可視近赤外(VNIR、地上分解能15m)データと短波長赤外(SWIR、地上分解能30m)データを用い、地上分解能を15mに統一してリサンプリングを行った。標高データは、国土地理院のレーザー取得による基盤地図情報5mメッシュ(標高)データ(DEMデータ)を用いた。研究手法として、衛星データとDEMデータから地表流水状況を表す指標を算出し、その分布図を作成して実際の氾濫図と照らし合わせる。地表流水状況を表す指標としては、衛星データからNDWI(正規化水指標)を算出し、通常時における地表面の湿潤状況を調べたほか、NDVI(正規化植生指標)を算出し、植物活性度を調べることで、氾濫域における植生の分布度について調べた。DEMデータからはTWI(地形湿度指標)を算出し、地形的な地表流水の溜まりやすさを調べた。
このことで、衛星データ解析による季節などによって変化が生じる地表面の実際の湿潤状況や植生の分布度と、DEMデータ解析による不変的な地形に依存する地表流水の溜まりやすさを把握することができ、これらの結果と実際の氾濫分布とを比較した。その結果、今回の研究において、TWIが異なる水害の氾濫域において、同じような高い値を示したことから、この指標を今後の河川整備にも応用できる可能性があると考えられる。今回は2つの水害の氾濫域についてのみの解析であったため、十分な結果が得られたとは言えないが、今後、他の水害についても氾濫域におけるTWIを算出し、ケーススタディを増やしていけば、氾濫しやすい地形条件を見つけ出す基準値も導き出せる可能性もある。
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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