日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 210
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京都五色浜海岸の微地形
― グナマとポットホール ―
*池田 碩待鳥 良治
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抄録
日本海に臨む京都府北部京丹後市の流紋岩質凝灰岩からなる五色浜一帯は、山陰海岸国立公園・世界ジオパークに所属する景勝地である。付近には海岸段丘が発達しており、さらに最下部には波浪によって形成された波食台であり、4mほどの高度差で2段に分かれている。岩石床として形成された当時は同様環境下であったものが、地盤の隆起により分化したものであるが、しかし現在両岩石床面上に存在している微地形はかなり異なっていることに気づいた。ここでは種々の微地形のうち特に特徴的な存在であり、さらに分布状況に違いがみられるHole(s)に絞って報告する。
岩石床の水平面上部に形成されている穴(群)Holesには2つのタイプがある。まずひとつめは、Potholeである。ポットホールには河川の渓流沿いの岩石床面に形成される場合が多いが、海岸でも形成される。どちらも形成要因は窪みに入り込んだ礫が水流によって回転・転動し周囲を摩耗していく過程で窪みが徐々に丸く深く大きな穴へと成長していくことにより形成されたものである。もうひとつのタイプは、岩石床面上部の窪みに水が溜まり、それが寒冷期に凍結融解を繰り返していくうちに、水は凍結する時体積を約1割膨張させるため、水が溜まった部分の岩体の窪みを凍結する毎に少しずつ砕きながら徐々に丸い穴へと成長させていく、さらに半乾燥地域では窪みに溜まったわずかな水が乾湿風化作用によって同様な穴を形成していく、それらのHoleをGnammaグナマ・ナマという。その形成には前記のポットホールの形成のような礫の必要はないため、表面の形態としては丸い穴だが、深さが一定の皿状Flat floor Panholeでその底の表面はザラザラしている。故にこのようなGnammaは寒冷地域や半乾燥地域に発達しており温暖湿潤な西南日本や積雪に覆われてしまう東北日本ではほとんどみられない。では本調査地五色浜のHole(s)は、はたしてどちらのタイプのものだろうか。
まず分布やその形成状況を調査した結果、Holeは低い方の岩石床面上には形成されていなく波打際に若干みられる位である。それに対し、高い岩石床面上には至るところに大小のHoleが形成されている。しかもそれらを詳細に観察し調査してみると、穴の中に礫は存在していない。穴の底部はほぼ平であり浅く、さらに底の表面はザラザラしている。これらのことから、五色浜のものはPotholeではなくて皿状のGnammaかPanholeであると判断した。
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