日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 827
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東アルプスのハイマツ帯とアルム
*小疇  尚
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抄録
東アルプスの約40か所の山でハイマツ(Pinus mugo)の分布を調べた。その結果、森林限界以上の高山帯下部に高距約300mの幅でハイマツ帯を形成していることが明らかになった。ハイマツの分布は、おもに片麻岩、片岩類からなる、最も高く多くの氷河をいただく中軸山地でさほど目立たず、その北と南の石灰岩山地で著しい。その原因として、カルスト地形が発達する石灰岩山地では、土壌がうすくハイマツ以外の植物がこの高度帯に侵入しにくく、地形的にもアルムに不適当な土地が多く、ハイマツの生育域が広いことがあげられる。これに対して片岩類の山地には、本来のハイマツ帯の高度帯に土壌の厚い小起伏地や緩斜面が多く、他の灌木類が繁茂したり森林限界が上昇して、ハイマツの生育域が狭められている。それに加えて、古くからハイマツ帯を拓いたアルムが広く分布して、ハイマツの分布域が人為によって著しく狭められた結果、ハイマツ群落が散在的になりあまり目立たなくなった。わが国では、ヨーロッパにハイマツ帯はないという謬説が検証されないまま広まっているが、アルプスではハイマツ帯を森林限界以上の高山帯下部に位置付けている。
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