抄録
本研究は,ハリウッド映画プロジェクトが国境を越えたクラスター間関係でいかに実行されているのかを,カナダのモントリオールをベースとしたCG企業であるFXカルテル社を事例として検討することを目的とする.FXカルテル社は,ロサンゼルスとモントリオールのキーパーソンが中心となって設立され,ハリウッドからの要請に対して,プロジェクト毎にモントリオールを中心に適切な企業や個人を組織して規模や構成メンバーを変えて必要とされるVFXを提供するところに特徴がある.2009年9月にモントリオールで現地調査を実施し,VFXプロデューサーのCarole Bouchard氏、VFXスーパーバイザーのGunnar Hansen氏、さらに参加企業のキーパーソンに対してヒアリング調査を行った。全プロジェクトに参加したコアプレーヤーがある一方,プロジェクト毎によって参加・不参加が異なるプレーヤーがある.モントリオール立地のプレーヤーが中心ではあるが,それ以外の立地の企業も含まれる.ハリウッド映画がロサンゼルスから遠隔立地のCGベンダーを使う場合,中小のブティック企業や個人アーティストを参加させることは煩雑なマネジメント問題が発生し障壁が大きかった.FXカルテルは,そうしたプレーヤーをマネジメントするサービスをハリウッドとカナダのクラスターの間を取り持つ形で提供することで,困難を可能にしている.