抄録
1. はじめに
一般的に山間地域における防災の問題点として、過疎化や限界集落における高齢者の避難行動の困難さが考えられる。本研究の対象地域である奈良県川上村も例外ではなく、集落のほとんどは限界集落となっている。また中央構造線の外帯にあたり、地盤が緩いため過去に大雨による土砂崩れがたびたび発生している。そこで、集落と避難場所の位置関係や危険区域をGIS上に表示し、集落立地から避難場所や避難経路の関係を分析し、超高齢化の進展した山間地域における避難経路・避難場所の在り方について考察する。
2. 避難場所の現状
2010年9月に研究対象地域で限界集落の現地調査を行った。この結果、川上村が現在指定している避難場所は集落ごとになく、避難場所まで直線距離で約7_km_あり、避難は集落内で一時的に行うほうが安全ではないかと言える。そこで災害時における避難場所の一つとして、安全でかつ住民が避難時間内に到達しやすい個人の家をセーフティプレイスとしたモデルを堤案した。
3. 分析方法
本研究では、地震災害ではなく雨による土砂災害を想定した分析を行った。使用データとして、基盤地図情報10mDEMとALOS PRIZMより作成した5mDEMの2種類のDEMを使用した。ALOS PRISMにおいては、ERDAS LPSを用いて空中三角測量を行い、5mDEMを抽出した。分析方法としては、DEMから傾斜ラスタを作成したのち、個人の家からのコストアロケーション分析を行った。このデータに抵抗値として傾斜を重みづけして、個人の家からの避難時間別に到達できる範囲を計算し、セーフティプレイスを自動的に抽出できるモデルをArcGISのモデルビルダーを利用して作成した。(図1) このデータに地形や地下水の流路方向などを考慮して集落内のセーフティプレイス自動抽出モデルの改良を行った。
4. まとめ
本研究の対象地域は山間地域にあるため、セーフティプレイス抽出に当たりより細かい精度が求められた。基盤地図情報10mDEMとPRISMより作成した5mDEMを用いて、個人の家からの避難時間別コストアロケーションラスタを作成し比較した。この結果、避難範囲の重なり程度からセーフティプレイスを自動抽出する可能性を示すことができた。