日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0109
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ジオパークの現状と課題
シンポジウム趣旨説明
*目代 邦康
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抄録
日本におけるジオパークの活動は,2008年に日本ジオパークネットワークが設立や,島原半島,洞爺湖有珠,糸魚川,山陰海岸の世界ジオパークネットワークへの加盟などがあり,各地で取り組みが年々盛んになってきている.学協会でのジオパークへの取り組みも様々な形で行われている.日本地理学会では,2008年より学会でシンポジウムを開催し議論を深めてきている.また,日本地質学会や日本火山学会,日本地球惑星科学連合大会でもジオパークに関するセッションやシンポジウムが開かれている.さらに,2011年には「地学雑誌」(東京地学協会)や「地図」(日本国際地図学会)でジオパークに関する特集号が組まれるなど,学術的な蓄積も徐々に現れている. このような状況ではあるが,各地のジオパークにおいては,地域のストーリーづくり,ガイド養成,環境保全といった具体的な課題について,どのような方策で対応していくか,ケースバイケースであり,方法論として確立したものはない.これまで各地のジオパークでは,行政担当者が主にその活動を支えてきているが,今後よりいっそうの研究者の関与,協力が必要であろう. 本シンポジウムではこれまで日本地理学会で行われてきた過去3回のシンポジウムの議論をふまえ,各地のジオパークの運営を担っている担当者に現状と課題を報告してもらい議論を深める.ジオパークに関わるテーマは多岐に渡るため,本シンポジウムでは,それぞれの地域におけるストーリーの構築,ガイドの養成とジオツアーの実際,そしてジオパークにおける保全活動とした.それぞれの地域におけるストーリーとは,それぞれのジオパークのコンセプトである.それぞれの地域の持つ地理学的,地学的資源をいかに発掘し,それを関連づけ,意味づけしていくかということが,各地のジオパークに求められている.これは地誌学的な課題であるともいえる.この作業がうまく行えてその情報発信がうまくいけば,ジオパークの魅力を高めることになり,訪れる観光客の満足度も高いものとなるであろう.もう一つの課題は,ガイドの養成とジオツアーの運営である.ジオパークは世界遺産などの仕組みとは異なり,地域住民が作り上げていくボトムアップ型の制度である.そこで中心となるアクターの一つが地域のガイドである.このガイドは誰が行うのか,またどのように養成していくのかは,各地で問題となっている.様々な実践例の中からよりよい方法を見つけ出していきたい.そして,ジオパークにおける保全活動は,ジオパークの中心課題であるにもかかわらず,これまで日本ではほとんど議論されてきていない.何をどのように保護,保全していくのか,そもそもジオの保存とはいかなるものなのかということを実例を元に議論したい. 今回のようにいくつのかのジオパークの内容を具体的に比較し議論するということは,これまでほとんど行われてきていない.地理学がジオパークの活動に貢献するためには,自然地理学,人文地理学双方の視点からのバックアップが必要である.このシンポジウムをきっかけに,各地のジオパークと学会とのより密接な関係が築かれ,よりよいジオパークの活動が進められていくことを期待したい.
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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