日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S1102
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日本地理学会地理教育専門委員会における教員研修会の意義と課題
*秋本 弘章
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抄録
今日,グローバル化,情報化の進展に伴って社会や地理で学ぶべき内容は拡大している。また,GISをはじめとする情報教育環境の改善も著しい.つまり,新たな技術・方法を活用しながら効率的な授業を工夫していく必要がある.
 一方,現行の免許制度では,大学における教科に関する科目の履修はきわめて少ない.特に,小学校では,大学において地理を全く履修しなくても教壇に立つことができる.
 こうした状況下において,現職教員に対して,地理教育に関する技能を高める研修が必要となる.日本地理教育学会において新任小学校教員に対して行ったアンケート調査によっても8割以上の教員が何らかの研修を希望している(秋本2010).こうした現状から日本地理学会地理教育専門委員において,研修を実施する意義は高いと考えられる.
 そこで,日本地理学会地理教育専門委員会においては,研修プログラムの開発とさまざまな機会をとらえた研修会を企画実践している.
 (1)休日等を活用した研修会
 地理教育専門委員会では,現職教員のニーズを把握するとともに研修会の実施についての可能性を実践的に探るために研修会を試行的に実践した.研修会は2007年2月に専門委員の平澤が校長を務める埼玉県菖蒲町立(現久喜市立)菖蒲中学校で実施した。内容は地形図の活用,パソコンを使った統計地図の作成等である.本研修会は参加者に好評で,2007年7月にさいたま市立白幡中学校で追加実施した.
 (2)地域の教育研究会等の研修への協力・連携
 市町村等の教職員で組織される教育研究会では,定期的に研修会を企画・実施している.こうした研究会への講師派遣は, 2007年9月に江東区小学校社会科研究会(於:江東区立小名木川小学校),2008年7月に稲城市社会科研究会(於:稲城市立稲城第六小学校)で実施した.主として小学校教員を対象とするため,研修内容はより基本的な内容とした.具体的には,地図帳の活用やインターネットサイトで公開されている学校周辺の空中写真の閲覧、地球儀とGoogle Earthの利用である.
2009年12月には全国中学校地理教育研究会の主催する地図研修会(足立区立興本扇学園)に講師を派遣し、GISの意義と統計地図作成等についての講義ならびにワークショップを行った.
また,千葉県高等学校教育研究会地理部会の大会の講演にも,同部会からの依頼に基づき講師を派遣の斡旋をした.
 (3)教育委員会等の研修への協力
 2009年度,2010年度には,埼玉県総合教育センターが企画実施する高等学校等教員対象の10年次研修(教科別研修)に専門委員を講師として派遣した.2010年の研修テーマは「教材開発による指導方法の工夫-フィールドワークを中心に-」であった.講義演習に加えて,埼玉県立文書館(地図センター)の見学・解説を行った.
 教科研修会は,ニーズが高いうえ,参加者の評価も高い.しかし,自主的な研修会への参加は,校務等との関係から制約が大きい状況にあるという.教育委員会等と連携した研修にすることが望ましい.また,現段階では研修会の企画実施は,専門委員の個人的なネットワークに依存するところが大きく,組織的な対応としては不十分である.とはいえ,学会の社会的活動の一つとして定期的に実施できるよう専門委員会としても積極的にかかわっていきたいと考えている.
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