日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 407
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アジアにおけるLCCs(低価格航空会社)の拡大戦略
*田中 耕市
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抄録
I. 研究目的
本研究は,アジアにおける国際LCCs(Low Cost Carriers;低価格航空会社)の拡大戦略について,空間的視点からその特性を考察する.アジア最大のLCCsであるAir Asiaグループを主に対象として,就航路線の拡大戦略と新たな長距離路線展開に特に注目する.

II. LCCsの発展過程
LCCsとは,運行形態やサービスを単純化させてコストを抑制することによって,低価格運賃を提供する航空会社である.そのモデルは米国のSouthwest Airlinesによって確立され,1978年の合衆国航空規制緩和を追い風に,多くのLCCsが市場参入した.ヨーロッパにおいては,1990年代のEU域内の航空自由化によってLCCsのシェアが急速に増加した.初期はSouthwest Airlinesを模倣した所謂SouthwestモデルのLCCsが乱立したが,競争が激化するとともに差別化をはかるために,従来とは異なるサービスを提供するLCCsも多く現れている.

III.アジアにおけるLCCsの展開
アジアでは2000年以降,東南アジアを中心にLCCsが急速に普及してきた.Air Asia Berhad(Malaysia),Jetstar Airways Asia(Singapore),Tiger Airways (Singapore)などが東南アジア内の短距離国際線ネットワークを密に構築した.なかでも,クアラルンプールに本拠を置くAir Asiaグループはアジア最大のLCCsであり,急成長を遂げてきた(図1).規制緩和によってLCCsの参入余地が出現した欧米とは異なり,航空自由化が進んでいないアジアでは,航空会社が就航するための国籍問題が障害となっていた.しかし,Air Asiaは現地資本との提携や現地航空会社の買収によって,バンコクやジャカルタに拠点を設けて航空路線網を戦略的に拡充させていった.

IV.長距離路線への展開
LCCsのビジネスモデルでは,短距離路線への就航に特化されているため,大陸間を跨ぐような長距離国際路線は未だに専ら大手航空会社が占有している.しかし,Air Asiaグループは,新規に長距離路線に特化した航空会社(Air Asia X)を立ち上げて,長距離国際路線市場への参入を開始した. 2008年に,クアラルンプールからロンドン,オーストラリア三都市(メルボルン,パース,ブリスベン)への就航を皮切りに,2010年12月までに東京(羽田)を含む8か国・地域の13都市に就航するに至っている(図2).
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