日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 616
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発表要旨
5kmメッシュ非静力学地域気候モデル(NHRCM-5km)による温暖化予測データの自治体対策への利用
-東京都奥多摩町を事例として-
*白 迎玖金子 郁容小林 光栗原 和夫高藪 出佐々木 秀孝村田 昭彦
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抄録
近年、高解像度の地域気候モデルの開発とそれを利用した日本域温暖化予測の研究が急速に進んでいる(例えば、Sasaki et al., 2011; Murata et al., 2012)。気象研究所は、水平格子間隔5kmの非静力学地域気候モデル(NHRCM-5km)を開発し、それによる日本附近の気候変動の将来予測計算を実施した。本研究は文部科学省科学技術戦略推進費「グリーン社会ICTライフインフラ」(課題代表者:慶應義塾大学金子郁容)の一環として、温暖化に伴う気候変化への自治体レベルの具体的な対応策を検討するための指針を提供することを目的とする。本稿においては、少子高齢化、過疎化が加速している東京都奥多摩町を研究対象地域として、NHRCM-5kmによりダウンスケーリングされた温暖化予測結果を自治体の既存データベースシステムに統合して、温暖化適応策の立案への活用するアプローチを検討する。東京都奥多摩町の面積は225.63km2で、東京都に所属する自治体では最大である。1950年代以降、町人口は減少を続け、2012年の人口は約5,856人(2012年1月1日)である。平成22年国勢調査によれば、人口の平均年齢は56.2歳で、高齢者率は約41.3%である(東京都の高齢者率は約20.7%)。奥多摩町の標高は高く(奥多摩町駅の標高は約343m)、都心部とは気候が大きく異なる。図1によれば、奥多摩町(観測点:小河内)の年平均気温は都心部(観測点:東京)より低く、都心部と同様、年平均気温が顕著に上昇している。本研究では文部科学省の革新プログラムにより気象研究所で作成された5㎞メッシュの温暖化予測データ(6-10月の暖候期)を使用した。また、数値気候モデルによるダウンスケーリングの結果は膨大であり、内容も専門的であって一般の利用に適さないことを考慮し、汎用データ変換ツールに加えて、地理情報システム(GIS)による気候変動5kmメッシュデータのマッピングを行った。これによりNHRCM-5kmによる予測結果を自治体レベルでの適応策への活用することを試みた。また、気象庁AMeDASの小河内(標高530m)観測データ(1979-2003年)を用い、観測値と5㎞メッシュモデルの観測点に最も近い陸上格子点のデータ(1979-2003)との比較も行った。現在気候実験における地上気温のバイアスが小さく、NHMRI-5kmによる奥多摩町の局地的な気候を再現できているといえる。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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