日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1401
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発表要旨
大学地理教育の質保証に関する教育課程編成上の参照基準の在り方
戸所 隆*碓井 照子*岡本 耕平*小田 宏信*吉田 容子*山下 博樹*石丸 哲史
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抄録
1. 地理学分野における参照基準の検討経過2008 年12 月に公表された中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」では、大学卒業までに身につけるべき能力として、「学士力」という考え方が打ち出された。これは、大学は学士学位授与の方針を具体化・明確化し、かつ社会に公開することによって、大学卒業者の能力を社会に対して保証すべきとの提言である。学士力には、論理的思考、コミュニケーション能力、倫理観など、分野横断的に共通した学修目標とともに、専門分野別の到達目標がある。後者をどう構築するかについては、文部科学省から日本学術会議へ審議が依頼され、「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」を中心に検討がなされた。日本学術会議は検討の結果、2010年8月の文部科学省への「回答」において、学士課程教育の質を保証するためには、各分野の教育課程編成上の参照基準を策定することが望ましいという方針を打ち出している。それを踏まえ、順次各分野に参照基準を検討する組織が設置され、参照基準案の作成に取り組んできている。地理学の分野では、第21期日本学術会議地域研究委員会・地球惑星科学委員会合同地理教育分科会に大学地理教育小委員会(岡本耕平委員長)が設置され、参照基準作成準備を始めた。また、大学地理教育の現場は国公私立で異なる上、地理専門教育、教職教育、地域政策系教育など多様である。そこで、2010 年10月の日本地理学会大会(名古屋大)で、参照基準作成の参考にすべく広島大学文学部、奈良大学文学部、国士舘大学文学部、福岡教育大学、岐阜大学地域科学部、青山学院大学経済学部の地理教育の実態報告を中心とした公開シンポジウムを開催した。このシンポジウムの総合討論では、①学生にとって地理学の学修がどのような意義を持つのか、②複合領域的学問の地理学に最低限必要な参照基準は何か、③学生の就職と地理学の質保証との係わり、④教養課程、教職課程、地理学の専門課程、経済学や地域政策などの地理学以外の専門課程の地理教育においてどのような質の保証がなされるべきかについて討議している。2. 公開シンポジウムの目的 2011年秋に発足した第22期日本学術会議地域研究委員会・地球惑星科学委員会合同地理教育分科会にも大学地理教育小委員会(戸所隆委員長)が設置され、2013年春までに地理学分野における参照基準の原案を作成することが求められた。そこで、これまでの準備を踏まえ、日本学術会議で示された「各分野における参照基準の作成のためのサンプル」を参考に作業を進めることにし、下記の「参照基準案の発表」6項目の検討を行ってきた。「地理学」参照基準は、どの大学においても活用可能な参照基準となることを目標に作成作業をしている。また、大学地理教育の現状を検討し、今後の日本の大学地理教育のあるべき姿とそれへの道筋を見出すことを目指してきた。そのためには、作成中の原案を多くの大学地理教育関係者に公表し、忌憚のない意見を頂く機会が不可欠となる。そこで本シンポジウムは、最終まとめに入る前に日本地理学会理事会と日本学術会議地域研究委員会・地球惑星科学委員会合同地理教育分科会の共催により広汎な意見を聴取し、参考基準作成に資することを目的としている。3. 公開シンポジウムの進め方 1)趣旨説明(岡本耕平・5分) 2)学術会議の立場から参照基準作成についての背景・経緯等を説明(碓井照子・15分) 3)参照基準案の発表(約60分 ※発表者) ①「地理学」の定義(岡本※・松本) ②「地理学」に固有の特性(小田※・高橋・村山) ③「地理学」を学ぶすべての学生が身につけることを目指すべき基本的な素養(戸所※・小口) ④ 学習方法および学習成果の評価方法に関する基本的な考え方(吉田※・高阪) ⑤広範な関連分野をもつ地理学専門教育と教養教育とのかかわり(山下※・山川) ⑥「地理学」と教員養成(石丸※) 4)総合討論・約80分(司会進行・戸所 隆)
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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