抄録
1978年の改革開放政策を実施して以来、中国は多国籍企業にとって一番重要な市場になっている。多国籍企業の中国事業展開の進展に伴い、駐在マネジャーは環境の変化によって自分自身の適応行動も自発的に変化する。この研究は中国の外国人マネジャーの成功プロセスはどのように現地環境の選好とネットワーク構築活動に関連していることを検討する。 これまで、学者は立地選好ということばを企業レベルで立地選択について注目が集めっている (Cox, 1972; Dunning, 2009)。Kahn (1992) は家族企業と非家族企業の立地選好を研究した。Edgington (1995) は北アメリカに進出している日系の不動産企業の立地行動を分析した。Boston and Roll’s (1996) はアフリカ系のアメリカ企業のクラスター創造に関して立地選好を検証した。いずれも制度的な主体 (企業) 分析で個人主体の選好に関する研究はまだ少ないと思われる。日本ではSchlunze and Plattner (2007) は企業環境、市場環境と生活環境という三つのレベルから日本における欧米人マネジャーの立地選好を分析した。ネットワークは、相互信頼関係の上で社会主体の間に社会資本、紐帯意図的な関係、知識伝達活動を指し、この行動主体は個人、グループとビジネス単位ある (Nahapiet and Ghoshal, 1998)。Burt (1997) は他者の間の繋がりを仲介することによって価値を付けると述べでいる。 この研究は行動中心アプローチ (Markusen, 2003)を利用した。中国に駐在している外国人マネジャーを対象にして、調査を行った。そのうち、上海で開催した『14回日中ものづくり商談会』の企業名簿か日本人マネジャー (235人)と730人の外国人マネジャーを対象にアンケートも実施した。162人のマネジャーがアンケートに参加した (回答率:16.7)。 その結果は、日本人マネジャーは現地の人的資源、新たな市場機会に対して関心が高かった。欧米人マネジャーはバリューチェーンとの連携に対して高い関心を示している。現地政府からのインセンティブ的なサポートは重要な要因ではないと考えている。また、日本人マネジャーは日本文化に親しい都市で勤務したい傾向があり、欧米人マネジャーはこのような傾向は見られなかった。外国人マネジャーはビジネス機能を中心にする都市で勤務したいが、政治的な機能を中心にする都市に勤務したくないという結果を示した。ネットワークの分析では、マネジャーの強い紐帯 (Granovetter, 1973) に注目して、ほとんどのマネジャーは同じ国籍のマネジャーが一番重要な紐帯と答えた。このようなネットワーク紐帯を個人ネットワーク、企業内ネットワークと企業間ネットワーク (Yeung, 1997) に分類して、Chi-square testテストの結果、マネジャーのタイプとネットワークの種類の間に有意性があることを明らかにした(p<0.01)。欧米人マネジャーの紐帯は個人ネットワークに依存する場合が多く(35人)、日本人は企業内ネットワークに依存する場合が多かった。結論としては、日本人駐在員は組織の戦略に合わせており、彼らの成功プロセスは間接的・制度的な関係に依存している。欧米人駐在員はホスト国のマネジャーと活発にコミュニケーションをとり、彼らの成功プロセスは直接的・個人的な関係に依存している。