日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P029
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発表要旨
ヘンサダ地点のボーリングデータからみたイラワジデルタ
*松本 真弓春山 成子
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抄録

 モンスーンアジア地域,特に東南アジアには多数の巨大デルタが存在し,多くの研究者がボーリングコアの分析による第四紀研究をおこなってきた.しかし,ミャンマーにおいては,長く閉鎖的な社会が続いたため,イラワジデルタにおける完新世の古環境変化については不明な点が多く,研究が進んでいない状況にある.古く遡ればイギリス植民地時代における研究もあるが,完新世の堆積層序については言及されておらず,イラワジデルタの環境変動,また完新世のデルタ形成発達史は未だ不明となっている.完新世は,世界的な気候変動と海面変動によりデルタが変動している時代である.そこで,本研究では,ボーリングコアの分析によりイラワジデルタにおける海水準変動の復元を試みたい.2009年以降,科学研究費を用いて現地での地形調査を行うともに,現地企業に依頼して, 3本のボーリング調査を行った.今回は,この試掘のうち,イラワジデルタ中央部のヘンサダ地点において行ったボーリング調査について報告する. ボーリングの試掘を行い,得られた堆積層からEC,NaCl,pHの測定,粒度分析の室内分析を行った結果,3つの層に分けることができた. Unit 1: 深度0~5.7mの堆積相は,主にシルト,粘土層から構成される.深度0.4~1.0mにおいて極細粒砂,細粒砂層がみられ,深度4.8~5.5mでは極細粒砂層を挟在する.ECの値が低い事から,Unit 1は河川堆積物層とした.深度2.5mと4.5m,5.5mから得られた土壌は,それぞれ2,220±20yrBP,5,833±28yrBP,5,930±25yrBPの暦年較正用年代を示した. Unit 2: 深度5.7~7.6mの堆積相は,塊状のシルト,粘土層から構成される.堆積層は青灰色を示し,ECの値が高いため,海成層とした.深度7.1mから得られた土壌は,7,209±27yrBPの暦年較正用年代を示した. Unit 3: 本堆積層は,深度7.6~9.3mのシルト,粘土層と,深度9.3~9.8mの極細粒砂層で構成される.Unit 2と比較するとECの値が低いが,深度8.9~9.3mと9.7~9.7mにおいて青灰色のシルト層が点在しているため海水の影響を受けていると考えられる.また,深度8.8mから得られた土壌は9,457±28yrBPの暦年較正用年代を示した.

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