日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 108
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発表要旨
陸前高田市における仮設店舗の展開と買い物弱者問題
被災地再建研究グループによる研究
*土屋 純
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抄録

 本発表は,津波によって中心市街地が壊滅的被災を受けた陸前高田市を事例として,仮設店舗の展開過程について説明するとともに,仮設住宅生活者が買い物弱者になっている状況について検討するものである. 津波被災の程度は,三陸沿岸においても地域によって異なる.宮古市など港湾地域を中心に市街地にも被害が及んだ地域もあれば,陸前高田市のように市街地の大半が壊滅的被害を受けた地域もある.市街地の大半が被災した市町村では,内陸部に仮設住宅と仮設店舗が展開し,仮の生活空間が構築されている. 陸前高田市に限らず津波被災地では,東日本大震災の直後,津波被災者は学校の体育館などで避難所生活を強いられた.陸前高田市の場合,2011年8月に避難所生活が終了しているが,地元自治体は避難所生活をいち早く解消するため仮設住宅の建設を最優先してきた.仮設住宅は地元小中学校など公有地に整備されている. 仮設住宅の整備が進行している中,独立行政法人中小企業基盤整備機構のプログラムによって仮設店舗の整備が進むこととなる.陸前高田市の場合,仮設住宅に公有地が占有されたため,仮設店舗のための用地を私有地でまかなうこととなった.傾斜地の田畑などが仮設店舗の用地となったので,仮設店舗が内陸地に分散的に展開することとなった. このように仮設住宅と仮設店舗の整備は,別々のプログラムで進められた.その結果,①仮設店舗のための用地を確保することが難しくなった,②仮設住宅と仮設店舗の一体型の整備が行われず両者が地理的に分離した,といった問題が生じた.

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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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