日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 105
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発表要旨
宮古市の仮設住宅室内における春季の温度環境
被災地再建研究グループによる研究
*高橋 信人佐野 嘉彦岩船 昌起
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抄録
1.研究目的 2011年3月11日に起こった東日本大震災に伴い、現在でも多くの被災者が仮設住宅において生活を続けている。発表者らは、仮設住宅における住環境や人体への影響を定量的に評価するための基礎データを収集することを目的として、岩手県宮古市にある愛宕仮設住宅内の一室において2012年3月より温度環境の観測および分析を始めた。本発表では観測開始時から春季における仮設住宅内の温度環境の特徴についての報告をおこなう。2.データと方法岩手県宮古市には60以上の仮設団地が建設されている(2012年7月20日時点)。本研究で対象としたのは、その中の一つ、愛宕仮設団地(45戸)にある一仮設住宅である。仮設住宅内の温度環境の計測は2012年3月18日に開始した。設置した温度計はエスペックミック社製のサーモレコーダーミニ(RT30S、RT31S)およびT&R社製のおんどとりJr.(RTR-52A)である。温度計は仮設住宅内の以下の場所、10ヶ所に設置した。・居間:4ヶ所(70 cm、70 cm壁、床上10 cm、床面)・寝室:1ヶ所(10 cm)・台所:2ヶ所(120 cmおよび床面)・トイレ:2ヶ所(120cmおよび床上20cm)・玄関:1ヶ所(100 cm) なお、壁、床面以外はいずれも壁面から20cm離れた位置にセンサを固定した。いずれの温度計も10分間隔で観測しており、得られたデータはあらかじめ恒温器内で計測した値をもとに器差補正をおこなってから分析に用いた。また、仮設住宅内には居住者が生活しているため、提示するデータは人工熱の影響を含んでいることに留意する必要がある。3.結果と考察 得られたデータから、3月19日から5月20日までの期間における63日平均の時間気温推移を各温度計で比較した。その結果、次のような特徴が明らかとなった。A. 日変化:室内全ての温度計で、6時に気温の最小値を示した後、急激に上昇して9時に一度目のピークを迎え、その後、少し気温は下がって15時まで徐々に上昇した後、21時に二度目のピーク(一度目より約1~2℃高い)を示す。B. 高さによる温度の違い:最も気温が低い値で推移する場所はトイレの床上20cmの温度計である。トイレの床上に加えて、居間、台所などの床面近くでは、それぞれ同地点の70~120cmに設置した温度計に比べて最大で約3℃高い値を示す(8時および20時に発現)。C. 部屋による温度の違い:70cm~120cmの高さの温度を部屋別に比較すると、最も低い値を示すのはトイレであり、最も高い値を示すのは居間や台所などで、トイレより平均的に1.5~3℃ほど高い(9時および21時に発現)。 Aの特徴から、仮設住宅内の温度環境は居住者のライフスタイルを大きく反映したものになっており、今回の例では特に9時と21時に気温のピークが現れることがわかった。室内気温の変化は居住者によるその日の活動に依存するため、日によっては一日3回以上のピークを示すこともある。また、Bの特徴から仮設は床面から冷えていることがよくわかる。暖房、調理、入浴などにより、8時および20時には高さ70cm~120cmにおいて温度の上昇が大きく、結果としてその時間帯に床面との温度差が大きくなる。赤外線カメラを使って得た温度環境をみると、住居を支える鉄柱が冷えており、これが壁面に伝わっている様子が明らかとなった。このような床面や鉄柱の低温からの伝導(および結露)をなるべく遮断することが求められているといえる。Cの特徴からは、居住者がいる部屋からは隔離された場所であるトイレで最も気温が低くなることが示されており、特に9時と21時にはその温度差が大きいことがわかる。気温の急激な変化は人体への負荷も大きいと考えられることから、トイレや風呂場などの隔離された空間における温度環境の対策も重要であると思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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