日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1207
会議情報

発表要旨
ダムと地域振興
*伊藤 達也
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
1.はじめに 我が国の過疎化現象は高度成長期から低成長期,さらには現在に至る大きな経済動向によって生じたものである。その中にあって,水資源開発や治水,さらには電源開発を目的としたダム開発はもっぱら過疎を促進する機能を果たしてきたと言える。山村地域における基幹集落や優良農地は水没し,山村地域を構成してきた地域社会,地域経済は崩壊の危機に瀕している。 しかし,そうした中にあって,ダム開発をテコとして観光開発等の地域振興を目論んできた地域,電源交付金等を使って地域振興を行ってきた地域,さらに近年では脱ダムを旗印に地域振興を目指す地域の存在を無視することはできない。全国に数多く存在するダム地域において,ダム開発並びに脱ダムを利用して地域振興を目指している地域に焦点を当てて,その可能性の検討を行う。本発表では主として観光開発等の地域振興に成功していると言われているダム及びその周辺地域について焦点を当てて考えていく。2.水源地域活性化事業 ダム計画に関わって過疎が促進された部分に対しては,これまで水源地域対策特別措置法(以下,水特法と言う)をはじめとする各種水源地域対策が実施されてきた。水特法は水源地域対策の基幹をなすものであり,高度成長期,全国各地で計画されたダムに関わって,水没関係者の生活再建を支援し,ダム建設によって著しい影響を受ける水源地域の影響緩和や活性化を図るための措置を講じることを目的に,1973年に制定された。その後,1978年には水特法の目的にスポーツ・レクリエーション施設の整備,1994年には水源地域活性化のための措置が加えられ,水源地域活性化を目的とする改正が行われている。さらに2001年からはダムを活かした水源地域の自立的・持続的活性化を図るための「水源地域ビジョン」が国土交通省(以下,国交省)所管ダムで策定されている。3.ダム湖利用実態調査による地域振興ダム こうしたダムを活かした地域振興策の成果を見ることのできるものとして国交省が「河川水辺の国勢調査」の一環として実施している「ダム湖利用実態調査」(1991年度~2006年度の3年おき)がある。これによると,2006年度102のダムにおいてダム湖及びその周辺の年間利用者総数は1,391万人で,前回調査(2003年度)と比べて6万人増加し,これまでの調査で最多となっている(図1)。また2006年度,利用者の多いダムは,1位宮ヶ瀬ダム(神奈川県,157万人),2位御所ダム(岩手県,96万人)で,「ダム湖利用実態調査」によれば,年間利用者数の多いダムは,「大都市の郊外」・「施設が充実」となっている。本発表ではこれら成功事例と言われているダム地域の実態に焦点を当てて検証を行う。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top