日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P024
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発表要旨
気候変動による生物季節への影響評価
*大西 有子
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抄録
近年、サクラの開花の早期化や紅葉の遅延化など、気候変動による生物季節への影響が顕著に見られるようになった。生物季節の変化は、花見や紅葉狩りといった社会生活や経済への影響の他、生物間作用や生態系機能等、生態系全体へ影響を及ぼすため、将来の変化を予測し、適切な対策を講じることが重要である。気候変動の影響評価、適応の研究では、IPCCの社会経済シナリオに基づく全球気候モデル(GCM)による気候予測をベースとするのが一般的で、生態系への影響においては、生物分布に関して盛んに行われている。しかし、生物季節の影響評価はほとんど行われてきていない。そこで、本研究では、4つのGCMによる将来気候シナリオを用い、日本全国で観測されている動植物22種27生物季節現象を対象とし、将来の生物季節の変化を予測することを目的とした。気候モデルには、IPCC SRES A1Bシナリオ(経済発展重視)に基づく4種のモデルを使い、モデルによる不確実性を定量化した。将来予測には、非線形で複雑な関係においても優れた予測精度を持つ、ニューラル・ネットワークとランダム・フォレストの2種類の統計モデルを使い、予測期間は、2031-50年と2081-2100年とした。 1953-2008年の間の生物季節の変化を調べた結果、全国平均では、10年あたり、サクラやウメ等春の開花は0.7-1.1日早まり、カエデやイチョウの黄紅葉や落葉は2.0-3.3日遅れていた。一方、九州や四国の比較的暖かい地域では、全国平均とは異なり、開花や満開は遅延化し、地域的な差が大きいことが明らかになった。気候要因との関連を調べた結果、冬と春の気温の上昇は生物季節現象の早期化、秋の気温は遅延化と関連が強かった。統計モデルの検証結果は、ツバキ、ヒバリ、シオカラトンボの3種以外のRMSEは1.6-8.2で、概ね精度は良好であった。GCMの不確実性の評価では、2081-2100年までに、春と秋の生物季節の変化の予測において、GFDLとMIROCの予測では7日程度と、モデルによる不確実性が大きいことが示された。ただし、全国平均では、ほとんどの春の生物季節は早期化の傾向が強まり、秋の生物季節は遅延化する傾向が見られた。しかし、生物季節変化の地理的な分布を調べると、春の植物の中には、開花、満開が遅延化する地域が増えると予測された種もあった。これは、秋、冬の気温の上昇により、休眠打破が遅れることによるものと思われる。従って、気候変動の影響評価を行う際には、全国規模の平均ではなく、地域別の予測を行うことが重要である。
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