日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 407
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発表要旨
家畜伝染病に対するリスク管理の地域的課題
2010年の宮崎県における口蹄疫発生への対応
*若本 啓子
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抄録
 2010年の宮崎県における口蹄疫発生を契機に、家畜伝染病予防法の改正と、飼養衛生管理基準および特定家畜伝染病防疫指針の見直しが行われた。主要な畜産県では防疫体制の強化にあたり、どのような課題を抱えているであろうか。本研究では、2010年の口蹄疫発生時の宮崎県における防疫対応が、他の畜産県への教訓となると考え、農家情報の把握と埋却地確保に焦点をあてて、リスク管理上の課題を明らかにする。
 宮崎県では他県に比して畜産経営体が著しく多く、口蹄疫発生時に牛・豚の飼養者を網羅するデータベースが未整備であった。このことにより、発生農家の位置把握に手間取るケースや、防疫マップ上での防疫措置対象農家の抽出が、瞬時に行えないという問題も生じた。さらに個人情報保護のため、発生農家の位置情報が近隣農家にも伝えられなかった。
 口蹄疫の感染拡大を招いた要因として指摘されているのが、殺処分家畜の埋却作業の遅延である。埋却地確保への対処法は市町村ごとに異なっている。都農町では発生農家の3分の2と、ワクチン接種農家のすべての家畜が共同埋却された。都農町における疑似患畜の防疫作業期間が児湯郡の他の町に比較して短いのは、小規模な肉用牛繁殖農家での発生が多かったことに加え、共同埋却方式の採用が影響していると考えられる。しかしながら、周辺住民の理解や埋却地の適切な管理に関しては、課題が残された。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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