日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 501
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発表要旨
環境変遷史を微化石分析で語る高校「世界史AB」と「地理AB」
*逸見 優一
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抄録
温暖化による、地球環境問題が高校など学校現場で取り上げられて久しい。私たちが日常の身の回りから学ぶためにはどのようなものがあるだろうか。地方にいても、全国各地に共通する素材は、土壌サンプルであろう。農地であったり、森林であったりする場所は、私たちがどこで生活していようとも、身近な生活場の近くに見いだせる。この生活場の育む様々なものは、たいがいは土壌の中にその役目を終えてゆくと混入してゆくこととなる。土壌の中には実に多くの過去の情報を、私たちにもたらしてくれるものがみられる。環境面では、プラントオパールや珪藻などが過去の過ぎ去った日々の痕跡について、多くの情報を、私たちに語ってくれる。高校では、「世界史A・B」の必修化が前提となる以上、「地理A・B」のもつ「地域調査」学習項目がはたす役割は、「世界史A・B」の持つ「課題的地域学習」を意識して実施することは、「地理A・B」を学習しないで高校生のメンタルマップ形成の最終章にある出口の部分を考える上で、今後も大きいものが有るとまだ考えられよう。この点は歴史性を意識し、時代的に時を見つめ、将来を見定める力として、「課題設定」能力や「課題解決」能力が改めて、グローカル化の較差の幅が増大する現代に生きる高校生には重要課題化するといえる。2012年度は、報告者は、珪藻と稲のプランとオパール分析をなかだちに日本でみられる水田の変遷史をサンプリング化し指標として、トルコ/アナトリア高原地域一帯の古環境復原指標との対比学習を実施していった。プレゼンテーション形式で報告者が過去に集めた、試料をもとに抽出した検鏡写真を生徒に提示しサンプリング微化石を対比考察させていった。生徒の反応・感想は比較的好評であった。「世界史A・B」を意識した場合には、珪藻とイネ科のプラントオパールが農耕の起源をめぐるサンプル例としては有効である、と高校でもいえる。実践例を積み上げることで高校での環境変遷史学習は「農耕の展開から文明へ」の学習項目だけに限らず、広く「地理AB」を学習せずに高校を終えてゆく高校生に、地球環境変遷史への興味・意識づけをもたらすことになってゆくと確信したい。現代の高校生は新鮮で、自らの学習意欲をかきたててくれるものには、絶えず学びの扉を開いて待っていてくれる。私たちはその思いに答えるために、自らの思いでもって答えてゆきたいものでありたい。
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