抄録
1995年の兵庫県南部地震直後から建物ベースの復興に関する現地調査を奈良大学防災調査団として実施し、ArcGISでデータベース化してきた。2012年5月の調査で41回目を迎える。このデータは、ゼンリンの住宅地図に記載された建物が地震で倒壊後に更地化され、新築が建設される17年間のプロセスを時空間データとして作成したものである。このデータは、建物の位置(x,y)、構造, 階数、表札、業種など建物ベースのマイクロジオデータの特性を有している。ミクロレベルのデータであるだけでなく、時系列に17年間の時空間的変化を記録しており、阪神淡路大震災地域の復興のプロセスが、詳細に分析可能である。本研究では瓦礫撤去終了、新築と更地数の逆転期までをそれぞれ復興初期・中期と分類し、その後を後期とした。瓦礫撤去は、震災1年後にはほぼ終了した。瓦礫撤去は国費で実施されたため、撤去進捗率には、顕著な地域差は、現れなかったが、その後の復興中期になると更地から新築への変化において東西の地域差が明確になる。西宮市、芦屋市、東灘区等、被災地域の東部が、長田区を含む被災地の西部地域よりも早く新築が建ち、復興の速度に東西差が明確になった。新築に関しては、各被災者の経済能力の格差が反映したと考えられる。17年経っても更地が被災地全域に一定の比率で残存している、新築率の東西差は、17年経つと解消されたが、被災地域全域では、ほぼ一定の割合(5%~4%)で、更地が残存し、更地から駐車場への変化も多い。社会的休閑地と言われる空き地化した更地と駐車場の増加は、阪神淡路大震災地域の復興を停滞させている。高齢化とローン問題、新築に関する建築基準法の接道制限、借地借家問題など日本の都市の本質的な問題点がみられる。