日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 104
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発表要旨
岩手県宮古市での「復興公営住宅共同研究」の概要
被災地再建研究グループによる研究
*岩船 昌起山下 浩樹佐野 嘉彦高橋 信人増沢 有葉関根 良平佐々木 歩高木 亨菊池 春子佐藤 育美
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抄録
東日本大震災で被災した市町村では、多様な問題が山積している。それらは時空間スケールが異なる現象が複雑に絡み合っていること,これに対応する行政やNPO法人等においてマンパワーが不足しかつ部署・団体間での連携が不十分であること等のために,地域再建がスムーズに行われているとは言い難い。特に,被災地の実態や被災者のニーズは地域と時間に応じて異なり,画一的な施策の実施を試みれば,場所とタイミングにおいて所々で綻びが生じ,さらなる問題の発生につながる恐れがある。従って,問題の対象となる「被災地と被災者」の実態についての継続調査が進められ,この成果に基づいて,地域再建にかかわる政策や施策等が展開されるべきであろう。 東北地方太平洋沖地震による津波で自宅が全壊した被災者は,大半が仮設住宅に入居しており,特に高齢者を中心に災害復興公営住宅等に移り住むことを希望している。被災地再建研究グループでは、被災地の「復興計画」の中で中核の一つとなる「復興公営住宅」とその周辺地域に注目し、この研究課題に対応する「復興公営住宅班」を編成した。そして、暮らしやすい「住まい」と「まち」が復興公営住宅の建設で実現できるように,これに関連する基礎資料を得るべく,復興公営住宅にかかわる総合的な共同研究を行う。調査地域は,岩手県宮古市である。「まちづくり」で最も重要な安全にかかわる「津波の浸水高」を市街地で既に高密度で計測しており,防災面も含めて考察できる。また比較対象地域として,隣接する山田町を予定している。調査項目は7項目にわたる。①仮設住宅内の温度環境,②仮設住宅内の構造等や設置物の計測と不便・改善点の聞き取り,③仮設住宅住民の年齢・性別や出身地区等の実態基礎調査,④日常生活の基礎となる体力や体格の計測,⑤日常生活での空間行動の聞き取り,⑥閉じ籠り傾向の人も対象とした心理学的な聞き取り調査,⑦被災地の商店街等の時系列的・空間的な再建過程等の復元とモニタリングである。本共同研究では,8月からの本格調査を実施して実証的な研究成果を上げた後に,岩手県や宮古市等の復興公営住宅にかかわる政策・施策との関連で提言していきたい。なお、本研究は、公益財団法人 トヨタ財団 「2012年度研究助成プログラム東日本大震災対応『特定課題』政策提言助成」の対象プロジェクト(D12-EA-1017,代表者 岩船昌起)の一部である。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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