日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P033
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発表要旨
1990年以降の国際資源循環の推移
日本と台湾を事例として
*波江 彰彦
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抄録
はじめに
 本報告では,日本と台湾を事例として,主に貿易統計のデータを用いて,1990年以降の国際資源循環の推移を検証し,その結果を提示する。1990年代以降,古紙・鉄くずなどの再生資源やE-waste,中古車などが国際的に流動する国際資源循環が活発化してきている。その背景には,中国大陸の急速な経済発展に伴う資源需要の高まりなどがある。日本と台湾は,中国の台頭により国際資源循環に関する相互の関係性の強さは相対的に弱まってきているものの,1990年代から現在まで,再生資源・中古品輸出入の主要相手という関係を保っている。一方で,中国への輸出急増を受けて,再生資源・中古品輸出入のトレンドに大きな変化がみられるという点が日本・台湾両者の共通点であり,また,両者間の相互関係にも変化が生じてきている。本報告はこうした点にも注目する。
日本の再生資源・中古品輸出入
 1990年代前半までの再生資源・中古品の輸出入は,輸入超過か(古紙・アルミニウムくずなど),輸出・輸入ともに少ない状況であった。その後,国内リサイクルの進展による再生資源等のストック増大などが背景となって徐々に輸出が増加し,2000年前後から多くの品目で中国に対する輸出が急増する。古紙の例では,1990年代後半では台湾やタイなどを相手として30~50万トンだった輸出量が,2001年には約150万トン,2000年代後半には400万トン前後まで急増しており,その9割は中国向けの輸出である。
台湾の再生資源・中古品輸出入
 台湾も,日本からはやや遅れるが,1990年代以降廃棄物リサイクルを推進している。1998年に1.2%だった都市廃棄物の資源回収率は2010年には37.5%まで急伸している。一方,再生資源・中古品の輸出入の一例として,図1・図2に古紙輸出入の推移を示した。台湾は現在まで大幅な輸入超過であるが,輸入量は大きな減少を示し,それに対して輸出量は2003年以降急増している。最も主要な輸入相手は一貫してアメリカであり,1990年代後半からは日本からの相当量の輸入もみられる。他方,輸出については,日本と同様に2000年代に入って中国向けの輸出が占める割合が非常に大きくなっている。
むすびにかえて
 ドメスティックな廃棄物リサイクルの進展(循環型社会の形成推進)と国際資源循環(廃棄物リサイクルのグローバル化)は相互に関連性をもつと考えられる。日本・台湾双方のこうした関連性について,今後さらに検討したい。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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