抄録
東南アジア地域では、利用できるデータ期間の制約上、20世紀後半以降の降水量変動について研究されることが多く、それよりも解析期間を長くとる場合には、月単位のデータを用いた解析が多い。しかし、フィリピンでは19世紀後半~20世紀前半にかけて日単位で記録された気象観測データが紙資料の状態で存在し、これらのデータの一部が近年ディジタル化されている。そこで本研究では、20世紀前半の日降水量データと、フィリピン宇宙気象局(PAGASA)による20世紀後半以降の観測データを併せて用いることで、月単位のデータからは解明できない100年スケールでの降水季節進行の長期変動を明らかにすることを目的とする。結果として、夏季雨季入り時期は1911-1939年平均では27半旬(5/11-15)、1952-2008年平均では28半旬(5/16-20)であった。特に1950年代後半~1970年代前半は相対的に雨季入りが早い時期が多く、1970年代後半~1990年代後半にかけては雨季入りが遅い時期が多いことが分かった。また20半旬以前に雨季入りするような年は20世紀前半にはみられない。今後はこれらの雨季入りの長期変動要因を明らかにしたい。