日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 318
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発表要旨
コンテンツを活用した地域振興活動の発展要因と活用パターン
*和田 崇
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抄録

近年,漫画やアニメ,ゲームを始めとする日本のコンテンツが海外で注目されるようになり,日本政府もこれを踏まえるかたちで,日本独自のコンテンツを海外に積極的に発信する「クールジャパン」戦略を展開してきた。一方で,日本国内においても,地方の自治体や経済団体などが漫画やアニメ,映画などのコンテンツを活用した観光振興や文化振興に取り組む事例が増加している。本発表では,日本におけるコンテンツを活用した地域振興活動について,その発展要因と活用パターンを概観する。
コンテンツを活用した地域振興活動が活発となってきた要因(背景)として,製作者と消費者,地域それぞれの環境変化を指摘できる。コンテンツの製作者は,デジタル化に伴って情報の編集・複製が容易になったこともあり,リスク削減と収益拡大のために,コンテンツの二次使用を積極的に行うようになり,地域もメディアの一つとみなされるようになった。また制作に当たり,新たなストーリーやロケーションを地域に求める動きも活発となってきた。消費者は,メディアごとにコンテンツを楽しむ従来からの消費形態に加え,インターネット上でコンテンツをめぐるコミュニケーションを楽しむという形態が確立した。その一方で,コンテンツゆかりの場所やリアルに再現される場所を訪ねることにより,コンテンツをより深く味わおうとする行動もみられるようになってきた。 各地域の自治体や経済団体などは,地方分権が進展する一方で,地域間競争を勝ち抜くことが求められるようになり,地域資源を活用した地域の個性化・魅力化に取り組むようになった。その際,手軽に制作あるいは活用可能な資源としてコンテンツが注目されるようになった。
コンテンツを活用した地域振興活動にみられるコンテンツと地域の関係については,3つのパターンを見出すことができる。第一は,歴史や風景など場所の持つ力がコンテンツに組み込まれている点である。それによって,製作者はコンテンツの魅力を高め,自治体や経済団体などは地域の魅力を発信している。第二は,地域がキャラクターの新たな活動場所となっている点である。それによって,製作者は二次使用の機会を広げ,自治体や経済団体などは地域や商品の知名度向上とブランド化に結びつけている。第三は,地域がコンテンツ消費者のライブ体験,購買,交流の場所となっている点である。

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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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